著者
靍久士 保利 金田 聡 飯田 明彦 内藤 哲也 池田 理恵 中澤 保子 若林 由紀子 山崎 明 山本 俊文
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.183-187, 2021 (Released:2022-01-25)
参考文献数
7

症例は2カ月男児.腸回転異常症・中腸軸捻転で,回盲部は残存するが残存小腸が30cmの短腸症候群となった.馴化期に入った後も,連日10回以上の排便,夜間に2~3時間ごとの排便があった.患児は体重増加が停滞し,頻便によるおむつ皮膚炎が増悪した.また,家人も頻回のおむつ交換で睡眠時間が確保できず,QOLが低下したため,以下の栄養管理の工夫を行った.①グァーガム分解物(partially hydrolyzed guar gum;以下,PHGGと略)の投与,②経管栄養剤や投与方法の検討,③五苓散の使用である.今回これらの3つの工夫を含めて5期に分類し,排便回数および夜間排便回数を比較検討したところ,probioticsとPHGGの併用,成分栄養剤とPHGGの混合液の持続投与に五苓散,離乳食を併用することで便性の改善と良好な体重増加が得られた.特に夜間排便回数が減少したことは,患児・家人のQOL改善につながったと考えられた.
著者
金田 聡 広田 雅行 内藤 万砂文
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.42-47, 2009-02-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
19

【目的】小児の腹部鈍的外傷の患者では,重症でも初期症状は軽度のことがあり,診断が困難な場合がある.小児腹部鈍的外傷症例の診察時に臓器損傷を見逃さないための注意点を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】対象は,1999年から2007年までに経験した臓器損傷を伴う小児腹部鈍的外傷の6例である.これら症例において初診から確定診断に至るまでの臨床症状,血液検査,画像検査等の経過を検討した.【結果】6例の平均年齢は8.7歳,性別は男児5例,女児1例,損傷臓器は,膵損傷2例,脾・左腎損傷1例,空腸穿孔2例,十二指腸穿孔1例であった.初診時に確定診断が得られたのは2例で,脾・左腎損傷例と空腸穿孔の1例において,初診時CT所見より診断された.他の4例では,初診時に確定診断が得られず,膵損傷の2例は,初診時の症状は軽度腹痛のみであったが,高アミラーゼ血症を認めたため膵損傷が疑われて治療は開始したものの,確定診断が得られたのは翌日のCT所見によってであった.十二指腸損傷例でも,初診時の症状は軽度腹痛のみで,検査でも異常は認めず,診断がつかないまま保存療法にて経過観察をしていたが,5日後の2回目のCTにより確定診断が得られた.更に空腸損傷の1例でも,初診時の腹部症状は軽度で,検査でも異常を認めなかったが,その後に症状が急激に増悪し,約12時間後の再診時に診断が得られた.【結論】小児の腹部鈍的外傷の診察時には,常に臓器損傷を念頭に置くこと,血液検査,検尿,超音波検査あるいはCTをルーチン検査とすること,また経時的な観察が必要であり,その重要性を保護者に十分に説明すること等が極めて重要である.