著者
針生 敏雄
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.86-96,A8, 1960 (Released:2010-11-19)
参考文献数
21

仙台市内の小中学校をその所在する地域によつて中央部・中間部・周辺部等の地区に分け,又家庭の生活程度によつて上・中・下の3層に区分して11才(小学校6学年)及び14才(中学校3学年)の児童生徒について,身長・体重・胸囲の身体発育,走力・跳力・投力・懸垂力等の運動能力及び知能指数について比較検討した.1)地域別比較においては,発育殊に身長発育は一般に市中央部に優れ,周辺部に劣る傾向を示している.体重はほぼ身長発育に伴うが,14才女に於ては周辺部が優れている.胸囲は男女とも概して周辺部に大である傾向を示す.2)地域別にみた児童生徒の走・跳・投力等の運動能力は中央部と周辺部に優れ,中間部地区比劣る傾向を示す.14才男女,殊に女に於ては周辺部が特に優れている.3)知能指数は中央部児童生徒に優れ,周辺部児童生徒に劣るが,特に14才男女に於て其の差が顕著である.4)生活程度別児童生徒の身長・体重・胸囲の身体発育は概して生活程度上位群に良く,下位群に劣るが,その差は特に身長発育に顕著である.身長・体重・胸囲の身体発育の生活程度上位・中位・下位群間における差は女11才に於ては明かであるが女14才では明かでなくなる.5)生活程度別にみた児童生徒の走・跳・投力等の運動能力も概して生活程度上位群に良く,下位群に劣る傾向を示すが,身体発育に於ける程顕著ではない.6)生活程度別にみた上位・中位・下位群の児童生徒の知能指数は上位群に優れ,下位群に劣る.此の傾向は女より男に顕著である.
著者
針生 敏雄
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.284-299,A21, 1960 (Released:2010-11-19)
参考文献数
11

仙台市内小・中学校児童・生徒について,その発育(身長・体重・胸囲)と運動能力(走・跳・投・懸垂力)・知能(I.Q.)との関係を検討した.I.身長・体重・胸囲各々について,之を大・中・小の3群に分けて,運動能力・知能を比較すると,11才の男女・14才男に於ては身長についても,体重についても,胸囲についても其の大・中・小群の順に走・跳・投力は何れも劣るが,懸垂力は11才男女では逆順を示し,14才男では走・跳・投力と同様に正順を示す.然しその大・中群間には有意差を認めない.14才の女に於ては,11才男女及び14才男と趣を異にし,身長と走力の関係のみ正順で,跳力は明かに逆順を示し,投力も大体逆順関係である.而して体重・胸囲に於ては走・跳・投力何れも其の関係が乱れて有意差を示さない.懸垂力は,身長に於ては一定の関係を示さないが,体重・胸囲に於ては大なる群ほど劣り,明かに逆順を示す.I.Q.については,身長では11才・14才男女総て身長の大なる群ほど優れている.然し女の大・中群間の差のみは11才・14才ともに有意と云い得ない.体重では,身長の場合と全く同様であるが,この場合は男11才の中・小群の差及び女11才・14才の大・中群の差には有意性が見られない.胸囲では,一定の傾向を認め得ないが,11才では男女とも大群が概して優れ,14才では男女とも小群が他群より明かに劣つている.II.発育と運動能力・知能との関係を,出生月令及び身長又は体重因子の影響を除外した第2次の相関係数について検討した.走力は身長に対し11才・14才,男女総て正相関を示し,殊に14才の女に於て相関の程度が強い.体重に対しては11才では男女とも明かな相関は見られず,14才では男は正相関,女は負相関を示す.胸囲に対しては11才男では正相関,14才女では負相関を見るが,11才女と14才男では相関々係を証明し得なかつた.跳力は身長に対し11才の男女と14才の女では正相関を示すが,14才の男では低い負の相関を示す.体重に対しては11才・14才の男のみ正相関を示し,11才の女では何らの相関を見ず,14才の女では負相関が見られる.而して14才男の正相関は特に顕著であつた.胸囲に対しては14才男に於て正相関が見られるのみである.投力は身長に対して11才の男女・14才の男女総て極めて低いが正相関があるものの様である.体重に対しては男に於てのみ正相関を示し,女では相関を認め難い.胸囲に対しても体重に於けると同様に男に於てのみ正相関を見る.懸垂力は身長に対し11才の男女及び14才の女に於ては相当の正相関を示すが,14才の男に於ては相関が見られない.体重に対しては身長の場合とは逆に11才の男女及び14才の女に於て相当程度の負相関を示すが,14才の男では低い正相関が見られる.胸囲に対しては体重の場合と大体同様に11才の男女及び14才の女では負相関が見られるが,その程度は体重の場合より極めて低い.而して14才の男では体重に於けると同様に低いながら正相関が見られる.I.Q.については,I.Q.そのものが既に月令的考慮が加えられているので零次の相関そのまゝであるが,身長に対しては11才の男女・14才の男女総て正相関を示す.体重に対しては14才女を除き総て低いながら正相関を示す.胸囲に対しては14才男のみ明かに正相関を示すが,14才女では0.12±0.050(P<0.05)の正相関であり,11才では男女ともに相関を見ない.最後に極めて概括的な結論を試みるならば同一生年月の者でも身体発育の良好な者は一般に其の運動能力及び知能の発達も良い傾向が認められる.然し此の傾向は発育完成に近ずくと低下するものゝ様である.