- 著者
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鈴木 健士
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2007
本研究は、軌道自由度を有する遷移金属酸化物における磁性-誘電性-結晶構造の相関現象の観測及び解明を目的としている。特に本年度は、光学測定を通じ、スピン・軌道の秩序化に伴う電子状態の変化を明らかにする事を主な目的とした。まず、スピン-軌道が同時に秩序化するMnV_2O_4の光学反射率測定を行った。その結果、スピン-軌道が秩序化する温度以下で光学伝導度の顕著な変化が観測された。これは、隣接V間のMottギャップ励起がスピン・軌道整列に伴い変化するためであると解釈した。また、ラマン散乱測定においてもスピン・軌道整列に伴い、ピークの出現及び強度の増大が観測された。特に、低エネルギー領域(170cm^<-1>及びその倍の波数)に観測されたピークの出現については、非弾性中性子散乱の結果及びラマン散乱で観測された対称性から、磁気励起(1マグノン及び2マグノン励起)によるものと解釈した。本研究で得られた軌道・スピン結合系の励起状態に対する知見は、軌道-スピンの物理を解明する上で重要な成果となると期待できる。更に、Vが形式的に非整数価数をとるBaV_<10>O_<15>も研究対象として選んだ。この物質では、構造相転移を起こす温度において、電気抵抗率に3桁に及ぶトビを示す異常が観測されており、この転移に伴う電子構造の変化を明らかにする事は、電荷の自由度と軌道の自由度との結合を解明する上で重要な知見となる。この目的の為に、赤外領域の光学反射率測定系を立ち上げ、赤外領域から可視領域までの光学反射率測定を行った。その結果、構造相転移温度においてギャップが開き、電気抵抗率の変化が金属絶縁体転移による事が明らかになった。また、光学伝導度は異方的である事も明らかになった。更に、放射光X線回折実験によりVが三量体を形成している事を示唆する結果が得られており、これが金属絶縁体転移の起源であると考えられる。