著者
トンプソン ワイアット 鈴木 充夫
出版者
北海道農業経済学会
雑誌
北海道農業経済研究 (ISSN:09189742)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.21-40, 1999-09-01

近年のわが国畜産物市場を取り巻く環境は、1980年代半ばからの牛肉価格の下落、1987年以降の飲用乳値の下落等大きく変化してきている。加えて、ガット・ウルグアイランド農業合意は、これらの変化を加速するものと予想される。本稿では、これらの環境変化がわが国畜産物市場に与える影響を分析するための計量経済モデルを開発することを目的としている。このモデルは、トンプソンの開発した畜産・食肉モデルと鈴木が開発した生乳・乳製品モデルをリンクしたものであり、(1)牛肉(和牛、乳用牛)、豚肉、鶏肉及び生乳・乳製品(バター、脱脂粉乳、チーズ)を包括的に含んでいること、(2)生乳・乳製品モデルで、北海道、また、バターと脱脂粉乳の技術的関係を明示的に取り入れた点が従来のこの種のモデルとは異なる。開発したモデルをもとに、牛肉の国際価格、飼料価格、及び所得変化がわが国畜産物市場に与える影響方向を検討した。その結果は以下のとおりである。1.牛肉の国際価格(CIF)が下落すれば、牛肉輸入量の増加をもたらすとともに他の食肉価格の下落を引き起こす。その影響は、乳用牛肉において大きい。これに対し、生乳・乳製品市場へ及ぼす影響は小さい。2.飼料価格の下落は、国内生乳生産を刺激的し飲用向供給量を増加させ、飲用乳価、農家平均生乳価格を引き下げる。北海道から都府県への飲用向供給量が大幅に増加することにより、飲用乳価の下落幅は北海道において大きい。国内の食肉消費量は、ほとんど変化しないが、豚肉、鶏肉生産はわずかに増加する。3.所得の増加は、食肉需要(とりわけ、牛肉需要)と食肉輸入量を増加させるとともに飲用乳価、農家平均生乳価格の上昇を引き起こし、搾乳牛頭数を増加させる。この結果、乳用雌牛と殺頭数が増加し、乳用牛肉価格が下落する。また、所得の増加は、乳製品生産量を刺激する。その影響はチーズにおいて大きい。