著者
阿部 隆三 丸浜 喜亮 奥口 文宣 及川 真一 柿崎 正栄 鈴木 勃志 後藤 由夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1452-1457, 1980

30才,男性で5~6才頃から黄色腫を有し,著明な高コレステロール血症を呈した症例の家族検診,および培養線維芽細胞の検討成績から家族性高コレステロール血症ホモ接合体と診断した症例を報告する.家族検診の脂質検査では, 11例中9例に高コレステロール血症がみられ,そのうち, 8例にIIa型高脂血症がみられた.また,本症例の弟に著明な黄色腫が認められた.一方,心電図所見では, 1例に虚血性変化がみられた.培養線維芽細胞の検討では,本症のアセテートからステロールへの合成能が,正常人培養線維芽細胞に比べ約18倍高い.また,本症例細胞のHMG-CoA reductase活性は,正常人細胞と比べ約15倍高い.さらに,正常人細胞では,培養液をリポ蛋白deficient mediumにすると,細胞内HMG CoA-reductaseの酵素誘導がおこり増加するが,本症例では全く誘導がみられない.以上の結果から, LDLレセプターを直接測定していないが, Goldsteinらの提唱しているLDLレセプターの完全欠損症,すなわち,家族性高コレステロール血症ホモ接合体の症例であることを証明しえた.本症例の治療成績では,クロフィブレートやコレスチポールに全く抵抗を示し,他の強力な治療法を行なう必要があると考えられる.