著者
小森 克俊 奥口 文宣 金塚 東 小林 正 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.165-172, 2013 (Released:2013-04-05)
参考文献数
22

2型糖尿病患者1184例にピオグリタゾン(以下PIO)を5年間投与したときの体重推移と増加に影響する因子をレトロスペクティブに検討した.HbA1cはPIO投与前8.0 %から5年後には7.1 %と平均0.9 %低下(p<0.001)し,体重は67.6±13.2(M±SD)kgから70.4±14.5 kgと平均2.8 kgの増加を認めた(p=0.001).体重はPIO投与後12ヶ月まで増加し以降はほぼ不変であった.PIO単独群と比べると,SU薬併用群,SU薬+BG薬併用群では体重増加は有意に大きく,個々の併用糖尿病薬の有無別にみるとSU薬併用では体重増加の助長,αGI薬併用では体重増加の抑制がみとめられた.重回帰分析では,女性,投与前のHbA1cと肥満度,SU薬,αGI薬併用の有無がPIO投与後の体重増加と有意に相関していた.一方,動脈硬化のリスクファクターであるHDL-Cは改善していた.
著者
阿部 隆三 丸浜 喜亮 奥口 文宣 及川 真一 柿崎 正栄 鈴木 勃志 後藤 由夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1452-1457, 1980

30才,男性で5~6才頃から黄色腫を有し,著明な高コレステロール血症を呈した症例の家族検診,および培養線維芽細胞の検討成績から家族性高コレステロール血症ホモ接合体と診断した症例を報告する.家族検診の脂質検査では, 11例中9例に高コレステロール血症がみられ,そのうち, 8例にIIa型高脂血症がみられた.また,本症例の弟に著明な黄色腫が認められた.一方,心電図所見では, 1例に虚血性変化がみられた.培養線維芽細胞の検討では,本症のアセテートからステロールへの合成能が,正常人培養線維芽細胞に比べ約18倍高い.また,本症例細胞のHMG-CoA reductase活性は,正常人細胞と比べ約15倍高い.さらに,正常人細胞では,培養液をリポ蛋白deficient mediumにすると,細胞内HMG CoA-reductaseの酵素誘導がおこり増加するが,本症例では全く誘導がみられない.以上の結果から, LDLレセプターを直接測定していないが, Goldsteinらの提唱しているLDLレセプターの完全欠損症,すなわち,家族性高コレステロール血症ホモ接合体の症例であることを証明しえた.本症例の治療成績では,クロフィブレートやコレスチポールに全く抵抗を示し,他の強力な治療法を行なう必要があると考えられる.