著者
長谷川 真理子 山口 岳史 鈴木 完 山本 英輝 西 明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.49-55, 2017-02-20 (Released:2017-02-20)
参考文献数
20

【目的】神経芽腫Stage 4S の治療と結果を後方視的に検討し,特に胎児期の無症状発見例の治療について考察する.【方法】過去33 年間に経験したStage 4S の神経芽腫9 例について,臨床的特徴,治療内容と転帰,全生存率,予後因子を検討した.【結果】症例は男児2 例,女児7 例,年齢は0 日~9 か月(中央値,1 か月)で,神経芽腫マススクリーニング発見例が4 例,胎児期発見例が2 例,有症状診断例が3 例であった.全例,副腎原発で,転移は肝8 例,皮膚2 例,骨髄1 例であった.腫瘍組織が検索された8 例では全例がfavorable histology で,3 例がdiploid,5 例がhyperdiploid,またMYCN の増幅例はなく,5 例が低リスク,3 例が中間リスクと分類された.治療は,マススクリーニング発見例では原発巣の一期的摘出と化学療法を行い,胎児期発見例では出生後に無治療経過観察を試みたが,結果的に腫瘍増大あるいは腫瘍マーカーの上昇により治療を必要とした.無症状発見例は1 例を除いて腫瘍なしで,全例が生存中である.一方,有症状発見例については積極的な治療を行い1 例のみ救命できたが,2 例が死亡した.全生存率は無症状発見例が100%,有症状診断例が33%であった.【結論】神経芽腫Stage 4S では,有症状診断例では迅速かつ積極的な対応が必須であり,一方,無症状でも胎児期発見例はマススクリーニング発見例と異なり腫瘍進展の可能性があり,厳重な監視のもとに治療の要否を判断することが極めて重要である.