著者
小林 庸平 佐藤 主光 鈴木 将覚
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.172-189, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
18

地方財政のテキストにおいて固定資産税は「望ましい地方税」の代表例としてあげられる。ただし,その前提は土地に対する課税であることだ。しかし実際のところ,日本の固定資産税は土地に加えて,家屋や機械設備等,償却資産をその対象に含む。とくに償却資産に対する課税は,固定資産税に法人税とは異なる形での資本課税の性格を与えてきた。そこで本稿では資本税としての固定資産税の経済効果を検証する。具体的には工業統計調査および経済センサス活動調査(経済産業省・総務省)の事業所別パネルデータを用いて,固定資産税の償却資産課税が設備投資(有形固定資産の形成)に及ぼす影響について実証した。推定結果からは,固定資産税が設備投資を損なっている(マイナス効果が有意になっている)こと,とくに流動性制約に直面している(キャッシュフローが負の)企業に対するマイナス効果が高いことが明らかになった。
著者
鈴木 将覚
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.209-229, 2011 (Released:2022-07-15)
参考文献数
13

アジア諸国への資本逃避の懸念が広く共有されている一方で,アジア諸国の法人実効税率の比較が行われることは少ない。本稿では,シンガポール,タイ,中国,韓国という法人税制の特徴が異なるアジア4ヵ国を対象に,EATRとEMTRの時系列的な変化を計算し,日本との比較を行った。その結果,①シンガポールとタイは,日本よりもEATR,EMTRともにはるかに低く,②日本と韓国のEATRの差は12%,中国と日本の差は7%であり,③日本と中国のEMTRがほぼ同じ水準にあることがわかった(機械設備の標準ケース)。こうした分析は,日本の法人税改革の当面の目的がEATRを5~10%引き下げて立地インセンティブを与えることであることを示唆する。また,タックスホリデーを用いた分析では,中国を除く国では免税期間が短い場合に実効税率が逆に上昇するとの興味深い結果が得られた。