著者
二科 妃里 杉山 紀幸 鈴木 昭人 成田 泰章 野崎 淳夫
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.15-25, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
12

近年,トイレ内臭気物質汚染の対策製品が数多く市販されているが,これらの製品性能を求めるにはトイレ内臭気物質汚染を再現する新たな技術が要求される。ヒトの屎尿排泄物は微小熱源でもあるため,屎尿排泄物から臭気物質は便器を経由して上昇拡散する。この場合,臀部や太ももの間から臭気物質は漏洩し,トイレ空間を汚染する。そのため,便器からの漏洩臭気物質による室内空気汚染を如何に再現するかが一つの課題であった。そこで,本研究では便器からの臭気物質発生法についての新たな提案と検証を行うものである。すなわち,1)排泄時の屎尿排泄物の臭気物質発生特性を有する「擬似汚物」の開発を行い,次に2)定常発生が行える「臭気ガス定常発生装置」を作製し,最後に3)非排泄時の臭気物質発生を再現する「臭気物質発生源シール」を作製した。実験的検証の結果,1)スポンジ,粘土素材によって作製した擬似汚物は,排泄時のアンモニア発生特性を再現できる。また,本擬似汚物と「臭気物質放散面積調整器」を便器に設置したところ,臭気物質汚染濃度は実際のトイレ汚染の傾向を示すものの,多少低めの値を示した。本手法は脱臭便座や消臭剤などの対策製品の性能試験に適応することできる。2)臭気ガス定常発生装置では,アンモニア濃度を長時間安定的に保持することができ,本手法は脱臭便座などの試験法に適している。3)非排泄時では便器付着物による汚染が問題となるが,「臭気物質発生源シール」でこの汚染が再現できる可能性がある。