著者
鈴木 暁世
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.1-16, 2015 (Released:2016-08-02)

郡虎彦は、一九一一年に「鉄輪」を『スバル』に発表した後、一九一三年に改作して『白樺』に掲載し、さらに一九一七年のロンドン上演のために自己翻訳した。本稿は、郡が「鉄輪」をどのように改作・自己翻訳したのかという問題を、ロンドンにおける「鉄輪」上演に関わる資料を用いて考察することを目的としている。「鉄輪」を上演したパイオニア・プレイアーズと演出家イーディス・クレイグは女性参政権運動と関わっており、同作は「精神的な柔術」として評価された。「鉄輪」上演と評価の背景には、英国における日本へのイメージと女性参政権運動と柔術の結びつきがあったことを指摘し、郡が「鉄輪」を改作・自己翻訳していく過程が、当時のイギリスの社会運動や思潮と響きあっていたことを明らかにしたい。
著者
鈴木 暁世 橋本 順光
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

20世紀初頭の英語圏で上演された日本を題材にした戯曲の中でも、菊池寛と郡虎彦の作品は、日本語で執筆された作品が英語に翻訳・上演される過程での、文化・言語圏の移動による変容が見られる。アイルランド、イギリス、日本における資料調査と専門家との研究情報交換を行い、新資料を発掘・整理した。その研究成果を公開するために、研究分担者と共にシンポジウム及びワークショップを計三回開催したほか、国際学術集会や国際ワークショップを含む国内外の学会で研究発表を行った。それらの研究発表における議論の結果を『日本近代文学』『比較文学』等査読付学会誌で発表し、著書『越境する想像力 日本近代文学とアイルランド』にまとめた。