著者
鈴木 知花
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.93-104, 2021-03-30 (Released:2023-03-30)
参考文献数
35

本論文は,公私二元論によってその社会性・政治性を否定され私的領域にのみ適用可能だとされてきたケアの倫理を,公的領域における社会福祉ひいては社会福祉政策の理念を基礎づけるものとして位置づける。代表的ケア論者たちの視点から,ケアの倫理を基盤とした社会福祉政策のあり様を理念的に探究することによって,近年の日本の障害者政策がいかにリベラリズム(正義の倫理)によって特徴づけられてきたのかを明らかにする。特に障害者自立支援法とその改正法である障害者総合支援法の根底にあるのは,リベラリズムが前提とする「強い」個人像である。 本論文はリベラリズムに代わるオルタナティヴとしてケアの倫理の視座から社会福祉のあり様を見つめることによって,人間一般が種として脆弱性を内包し,相互依存的なケアの関係性の中で生きるものであることを基調とする社会福祉政策が要請されることを提起する。