著者
棚原 朗 仲栄 真史哉 鈴木 秀隆 金城 嘉哉
出版者
The Japanese Coral Reef Society
雑誌
日本サンゴ礁学会誌 (ISSN:13451421)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.79-89, 2013
被引用文献数
1

沖縄県那覇市の国場川と饒波川の下流域に広がる漫湖干潟において柱状試料を採取し,それに記録された金属元素濃度の経年変化を解析した。干潟は人口密集地に位置し,周辺および河川上流域の開発に伴い重金属が土壌と共に流入していると考えられる。得られた柱状試料の <sup>210</sup> Pb <sub>ex</sub> 法による堆積速度は1.1~1.9cm・y <sup>-1 </sup>(2.1~3.7g・cm <sup>-2</sup>・y <sup>-1</sup> )と比較的速いことが分かった。金属元素濃度の経年変化として,主成分元素の一つであるアルミニウムの濃度変動は小さく,カルシウムは1900年代から増加傾向を示した。鉛は1950年代から増加傾向を示したが,1980年代から減少傾向にあり,自動車ガソリンの無鉛化が影響している。その他の重金属(Ni,Cu,Hg)は,饒波川下流では少なく両方の川が合流する地点で高い濃度を示したことから,主な起源として国場川からの流入が示唆された。