著者
鈴木 義雄
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.1173-1182, 1982-08-20

はじめに 人工肛門というアイデアがこの世に生れたのは1710年のことである.フランスのルイ14世時代で,日本では,宝永7年,7代将軍家継の時代にあたる.フランスのAlexis Littr'eは,生後6日目,鎖肛で死亡した新生児を解剖し,閉鎖部位を切除して,今日でいう,端々吻合を行うか,少なくとも,閉鎖部位より口側の腸管を体外に誘導すれば,救命できたであろうと示唆した.Académie Royale de Sciencesの歴史学者Fontanelle氏が,上記のような,Alexis Littr'eの文献に着目し紹介したのが初まりである(Tilson Dinnick1)より).現在の高度に発達した医療を十分に理解するために,過去の流れに注目することは意義がある.人工肛門造設術も当然変遷の歴史があり,今回は現在の人工肛門造設術にいたつた過程を年代順にひもといてみたい.