著者
鈴木 芳代
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究計画に従い,線虫のコンピュータモデルの構築,実生物実験および生物モデルに基づく移動ロボットの制御実験を行った.これらの成果は,学術雑誌および国際学会にて発表した.それぞれの内容にっいて,以下にまとめる(次頁[雑誌論文]記載の順).1.線虫の機械刺激応答(走触性)を担う神経回路のモデルと運動を担う筋の簡略なモデルを作成し,両者を連結することで,前進・後退といった応答をコンピュータ上で再現した.2.地面の摩擦や筋の硬さ,体重など,1.では考慮できていなかったダイナミクスを考慮し,筋モデルをより詳細なものとした.また,筋を支配する神経回路を実生物に忠実にモデル化することで,複雑な運動を再現可能とした.神経回路モデルに含まれる一部の神経細胞を除去したシミュレーションでは,正常体をもとに作成した本モデルにより,変異体の挙動もある程度再現できることが確認された.3.方向制御を担う神経回路をモデル化することで,刺激に応じて運動方向を変化させる線虫の応答を再現した.また,実生物の立体的な筋構造を詳細に表現する体の3次元モデルを新たに考案し,方向制御回路と連結することで,刺激に応じた種々の空間的な運動の表現を実現した.4.1.の走触性神経回路モデルと2.のダイナミクスを考慮した筋の詳細なモデルを連結することにより,刺激に対する応答(前進・後退)をより実生物に近いものとした.5.日本原子力研究開発機構において,線虫の走化性やFood応答に対する放射線照射効果を調べる実験を行った.この結果をもとに,走化性や学習といった応答・機能をシミュレートする初期モデルを新たに構築した.6.構築した線虫モデルを用いて機械システムを制御することを目指し,まず,単細胞生物であるゾウリムシのモデルを用いて小型移動ロボットのバイオミメティック制御を行った.この結果から,線虫モデルに基づく機械システムの制御法について検討した.