著者
鈴木 長寿
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

有機合成の実験教材開発の基礎として、マグネチックスターラーを用いたポリスチレン微粒子合成において粒子径を制御するための諸条件を検討した。ポリスチレン微粒子は、窒素雰囲気にした反応容器内にペルオキソニ硫酸カリウム0.0620g、スチレンモノマー1.52gを含む溶液300mLを入れ、ホットマグネチックスターラーにより80℃で24時間撹拌しながら合成した。合成時の撹拌速度は50~1000rpmまで段階的に変えた。その結果、200~500rpmの範囲で200~250nmのほぼ均一な粒子径の微粒子が合成でき、粒子径は回転数に比例して小さくなることがわかった。100rpm以下の弱い撹拌では液面で膜状にポリスチレンが固化し、600rpm以上では溶液の回転の乱れが大きく粒子径が不均一になった。反応容器では、筒状のセパラブルフラスコより三角フラスコの方が安定的に粒子径を制御できた。また、筒状フラスコで合成した粒子は三角フラスコに比べ径が小さくなる傾向が見られた。撹拌子は、棒状のテーパー型以外の形状の異なるものも用いたが、粒子径の変化に大きな差は見られなかった。合成後、得られた白色のポリスチレン分散液から微粒子を遠心分離したものをガラスのプレート上に塗布し、乾燥後発色を確認した。また、走査型電子顕微鏡で形状と配列、粒子径を観察・測定した。今回、合成した粒子径の異なる微粒子を用いて、赤・黄・緑・青色の4色の構造色を呈するコロイドフォトニック結晶を作製できた。粒子の配列が充填構造でないものや粒子径が不揃いなものは構造色が発現せず白色のままであった。粒子径が均一な微粒子を充填構造な配列に塗布したガラスの反射光を紫外可視分光光度計で測定したところ、反射光を呈する結晶の粒子径と最大反射波長には比例関係が確認できた。将来的にはゲルや樹脂中への固定化も含めて生徒実験としても実施可能な教材を目指したい。