著者
伊藤 暢宏 大輪 芳裕 堀越 伊知郎 黒川 剛 鈴村 和義 野浪 敏明
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.645-648, 2004

症例は64歳, 男性。留置所内において, 自殺目的で腹部に箸を突き立て, 壁にぶつかり受傷し, 当院に搬送された。来院時, 意識状態良好で, バイタルサインも安定しており, 腹部は平坦, 貧血を認めなかった。箸は膀部より刺入, 固定されていた。腹部CT検査にて, 箸は1下大静脈を貫通後, 腰部椎体にまで達していたが, 明らかな腹腔内出血, 遊離ガス像は認めなかった。箸刺創による下大静脈損傷と診断し, 緊急手術を施行した。箸は, Treitz靱帯より約30cm肛門側の空腸と, 総腸骨静脈合流部より約2cm頭側の下大静脈を貫通し, 椎体に刺さっていた。下大静脈貫通部を縫合止血後, 空腸貫通部も一次的に縫合閉鎖をした。他の損傷は認めなかった。術後経過良好で, 第16病日目に退院した。腹部刺創では, 受傷状態のまま搬送することが肝要であり, 全身状態が安定していれば, 損傷部位の診断にCT検査は有用である。
著者
三嶋 秀行 木村 研吾 池永 雅一 安井 昌義 内野 大倫 岩田 力 大橋 紀文 伊藤 暢宏 鈴村 和義 佐野 力
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.897-905, 2014 (Released:2014-11-01)
参考文献数
5

切除不能大腸癌に対する化学療法は進歩し,3種類の殺細胞薬だけでなく,3種類の分子標的薬が使用できるようになった.生存期間中央値は2年まで延長したものの,未だに治癒を望むことは難しいので,化学療法の目的は,治癒ではなく延命である.抗VEGF抗体は単剤では効果がなく,殺細胞薬との併用により延命効果が期待できる.抗EGFR抗体にはバイオマーカーが存在し,RAS変異があると効果が期待できない.殺細胞薬と併用でも,単剤でも使用できる.FOLFOXとFOLFIRI,抗VEGF抗体と抗EGFR抗体どちらを選んでも効果に大差はないので,有害事象や腫瘍の状態に応じて選択する.注射のFUは効果を下げずに経口FUに置き換えることができる.重篤な有害事象の発生を好まない患者に対しては,支持療法だけでなく,分子標的薬をベースにすることや,用量調節により,QOLを維持した延命が可能になる.経口の分子標的薬レゴラフェニブの用量調節が困難な場合,titration法などを用いた工夫が必要になる.