著者
鉄村 進 木村 豪雄 佐藤 祐美 古田 一史 三潴 忠道
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.103-108, 2005-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

重症骨粗鬆症により多発性骨折をきたし, 痛みのため寝たきりとなった患者に対して桂枝附子湯を投与し著効を得た1例を経験した。患者は68歳の女性。6年前に骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折の診断を受けていた。2000年11月, 原因不明の胸背部の強い疼痛と全身性接触性皮膚炎にて入院となった。患者は強い痛みのため寝たきり状態であった。骨シンチグラフィーにて胸郭・脊椎部に多発性の集積像がみられたが, 明らかな悪性疾患は見出せなかった。またMRIでは胸腰椎に多発性の圧迫骨折がみられた。強い表在性の痛みと四肢の冷えを目標として桂枝附子湯を投与した。痛みは除々に軽減し, 2ヵ月後には機能訓練を開始することが出来た。その後, 痛みと皮膚の状態によって黄耆建中湯, 桂姜棗草黄辛附湯および八味丸を投与した。11ヵ月後には介助起立が可能なまでに回復した。桂枝附子湯の骨粗鬆症による多発性骨折に伴う痛みに対する有用性が示唆された。
著者
木村 豪雄 岡 洋志 平崎 能郎 鉄村 進 古田 一史 三潴 忠道
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.951-956, 2003-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

肝癌に伴う腹水と浮腫に対して防已椒目〓〓大黄丸料を使用し, 興味ある効果を経験した。症例は80歳女性。2002年4月, 急速に進行する対麻痺, 膀胱直腸障害を呈した。転移性胸椎腫瘍の診断で手術されたが, 術後より下肢浮腫と腹水を生じた。腹部CTにて肝硬変および肝癌が指摘された。腹満, 口腔内の乾燥, 便秘を目標として防已椒目〓〓大黄丸料を投与した。下肢の浮腫は速やかに軽減し, CTで腹水の減少が確認できた。しかし原疾患の進行に伴い, 1ヵ月余りで効果は徐々に減弱した。悪性腫瘍に伴う腹水の治療は困難であるが, 本方は腹水に対する有効な方剤として再注目すべきである。