- 著者
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鎌倉 昌樹
- 出版者
- 富山県立大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本年度は次のような項目において研究を実施した。1,神経化学的解析による疲労の分子機構の解明ロイヤラクチンの抗疲労作用を総合的に評価するため疲労の新たな評価系の構築を目指し、脳内における疲労の分子機構の解明に着手した。疲労の発現に大きく関与する脳を中心に疲労前後のマウスにおいて発現が変動している遺伝子を解析した結果、流水遊泳装置を用いて疲労させた後の海馬において発現が上昇する因子として、興奮性のシナプス伝達に関与するAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)α1サブユニット(GluR1)と神経細胞においてアポトーシスのシグナル伝達に関与するB-cell receptor-associated protein 31(Bap31)を新たに見出した。一方拘束水浸ストレスを与えたマウスでは、GluR1とBap31の遺伝子発現に変化は見られなかった。従って、GluR1とBap31は精神ストレスではなく疲労の時にのみ発現が誘導される因子である可能性が考えられた。2,ローヤルゼリーの抗コレステロールの作用機構の解明ローヤルゼリー(RJ)は肝臓に対する様々な薬理活性を有す。しかし、その作用メカニズムやRJ中の有効成分は未だ明らかになっていない。そこで今年度は、RJの肝臓に対する薬理作用のメカニズムの解明にも着手した。その結果、RJの抗コレステロール作用は、コレステロール合成に関与するスクアレンエポキシダーゼの発現を転写レベルで抑制し、コレステロールの肝臓への取込みに関与するLow density lipoprotein receptor (LDLR)の発現を増強することに起因していることが明らかとなった。3,ロイヤラクチンが作用する肝細胞の受容体の同定昨年度、バインディングアッセイによる解析から57kDaローヤルゼリータンパク質(ロイヤラクチン)ははトランスフォーミング増殖因子(TGF)-αのアゴニストとして、肝細胞表面の上皮増殖因子(EGF)受容体に作用している可能性があることを報告した。さらに、ラット肝臓cDNAライブラリーを対象として酵母Two hybrid systemを用いた解析を行ったところ、ロイヤラクチンと相互作用するタンパク質としてRhomboidというタンパク質が新たに見出された。Rhomboidは、ショウジョウバエ(Drosophila)においてSpitzというTGF-α様のリガンドを切断し、EGF受容体を活性化している因子である。現在のところ、哺乳類細胞におけるRhomboidのホモログは見つかっているが、Spitzと相同性を示すタンパク質はいまだ見つかっていないことから、TGF-α様のロイヤラクチンが疑似的にRhomboidと結合したものと考えられた。しかし、ロイヤラクチンは蜜蜂においてRhomoboid-Spiz経路を活性化するという新たなシグナル経路を形成している可能性が示唆された。現在、Drosophilaを用いてロイヤラクチンが同経路の活性化しているか否かについての検討を行っている。