著者
野口 弥吉 鎌田 悦男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.33-40, 1959

数品種の水稲について温度並びに栄養状態の変化が播種より山穂までの日数に及ぼす影響を測定した。感温性の高い早生種では高温に遭遇する時期が早いほど出穂が促進され,特に温度感応性の最も高い農林11号は高温の下で約40日で出穂した。また,窒素欠乏の状態では出穂は促進され,燐酸が与えられない場合は逆に出穂の遅延することを知つた。後者は特に低温で著しかった。次に農林11号について第4葉までを順次切断して高温の下で育て,幼植物時代の温度感応が第何葉で始まるかを調べたところ,第4葉または第4葉身を切ると出穂の遅れることが認められ,第4葉以上が高温に感じ,いわゆる花成ホルモンをつくることが明らかとなった。更に同じ品種を暗黒または光線不足,窒素欠乏等栄養生長をとどめるような処理をして高温を作用させたところ,大部分の植物は第5葉または第6葉を止葉として出穂した。特に1個体は葉数4で幼穂の形成がみられた。これらのことは上の事実を再確認すると共に,農林11号の基本栄養生長は第4葉出現期に既に終ることを証明している。この最高感温性品種の基本栄養生長期の決定は今後の水稲感温性の研究に資するところが大きい。
著者
県 和一 鎌田 悦男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.103-109, 1979-07-31
被引用文献数
6

ミャコザサ群落の永続的な放牧利用と効率的な抑圧除去の適期を明らかにするための研究の一環として,浅間山南麓のミヤコザサ群落を対象に,年間の生育経過を器官別乾物重,稈数,葉面積,生産構造,冬芽などの月別変化から調査し,次の結果を得た。(1)地上部現存量は春から夏に急増し,8月未に最大となったのち翌春まで漸減する傾向を示した。一方,地下部現存量はこれとは対照的に春から夏にかけて急減し,夏から初冬にかけて回復する推移を示した。その結果,T/R比は夏に最大値を示し,冬に最小値を示した。また全現存量は年間を通じてほぼ一定値を維持した。(2)LAIも地上部現存量とほぼ同様の季節変化を示し,当年生稈に着生する葉数と密接な相関々係を示した。(3)地上稈の寿命は地上に稈が発生してから平均18〜20ヶ月であることが示された。(4)生産構造は季節的に異なる変化を示したが,群落吸光係数には大きな差異はなく0.742〜0.778の範囲であった。また群落地表面における相対光度は冬から春までの期間は10〜20%であり,生育シーズン中は1〜5%であった。(5)地下茎各節の冬芽の数は4月未から5月未までの間に大部分が地上に発生するので,夏の期間は極度に少なくなるが,9月から10月に再び急増し,その後はほぼ一定数を維持した。これに対して,新地下茎数は6月から8月に急増する傾向を示した。以上から,ミヤコザサ群落の永続的な放牧利用を図るための適期は晩秋から翌春までの期間であり,群落抑圧のための効率的な適期は夏であると推定される。