著者
井上 光子 鎌田 裕二 坂東 慧 田口 朋 村田 秋穂 新井 梨衣那 佐々木 紗也加 林 哲範 高野 幸路 七里 眞義
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.214-219, 2019-04-30 (Released:2019-04-30)
参考文献数
25

67歳男性.インフルエンザワクチン接種2日後に口渇を認め,1週間で体重が6 kg減少した.ワクチン接種9日後に受診し,空腹時血糖329 mg/dL,HbA1c 8.4 %,尿中ケトン3+,pH 7.430,HCO3- 21.5 mmol/Lであり,糖尿病性ケトーシスで入院した.先行する上気道症状はなく,受診19日前はHbA1c 5.7 %であった.入院時,膵外分泌酵素は上昇し膵島関連自己抗体はZnT8抗体のみ陽性であった.尿中CPR 22.4 μg/日,グルカゴン負荷試験でCPR前値0.54 ng/mL,6分値1.15 ng/mLと,内因性インスリン分泌は枯渇せずに留まっていた.HLAタイピングは自己免疫性1型糖尿病の疾患抵抗性を示すDQB1*06:01:01/06:02:01であった.本症例は劇症1型糖尿病に類似し,発症にインフルエンザワクチンの関与が示唆された急性発症1型糖尿病である.