著者
鎌田 高造
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2010 (Released:2010-06-10)

国土地理院と測量法 我が国における測量、とりわけ公費を投入して行われる測量は、その正確さを確保すること及び測量の重複を排除する観点から、測量法に基づいて実施しなければならないこととなっている。 国土地理院は、全ての測量の基礎となる測量―これを測量法では「基本測量」と定義している―を実施している国家機関である。国土(領土領海の境界を含む)の正確な形状を示し、また、日本国内で測量を行う全ての者のために測量の基準(とりわけ位置の基準)を決定することが、基本測量の権能である。 測量の結果として得られる成果は、大別して基準点の成果(正確な経緯度、高さなどの数値)、1/25,000地形図に代表される地図及びに分類される。これらの測量成果は、誰でも安価に成果を入手することができる。 測量成果の保管及び供覧 得られた測量成果は、大切に保管しておかねばならない。国土地理院では、測量法制定以降の成果はもちろん、旧陸地測量部時代の測量成果についても保管している。例えば地図は、明治や大正期に作成されたものも「旧版地図」として保管しており、それらをつくば市の本院及び各地の地方測量部で閲覧に供している。特につくば市の本院では、「情報サービス館」を設けて、全国の空中写真約110万枚、国土地理院が刊行した過去から現在に至る全ての地図、基準点の成果表及び点の記等について、閲覧に供するとともに、希望者には謄抄本の交付も行っている。 国土変遷アーカイブ 社会のIT化が進んでいることを受けて、測量成果もウェブ上で閲覧に供している。1/25,000地形図などは10年以上前に試験公開を開始したが、空中写真や旧版地図は平成16年度に「国土変遷アーカイブ」と銘打ってウェブ上での公開を開始した。 国土変遷アーカイブでは、さまざまな撮影時期の空中写真及び明治期以来の地形図(旧版地図)をデジタル化し、DBに格納している。空中写真はウェブ上に簡易検索システムが用意されており、撮影コース、撮影場所、撮影時期などをキーとして検索可能となっている。空中写真は、ファイルサイズと精細度を勘案して、200dpi でフィルムを読み取ったものを閲覧に供している。一方、空中写真はファイルサイズが巨大でウェブ公開には適さないため、つくば市の本院にある情報サービス館のパソコンで自由に見られるようサービスしている。 国土変遷アーカイブの意義 国土変遷アーカイブは、国土地理院が保有する膨大な地図と空中写真をデジタルでアーカイブいるので、地域の時系列的な変化を容易に追うことができる。 また、過去の地形、地貌を確認できるため、工事などによる土地改変が行われる前の現地の状況を知ることも容易である。 空中写真については、更に高い解像度の画像を必要とする利用者も多いが、それらの利用者のために、最大2540dpiまでの画像を別途販売しており、販売サイトへも簡単に画面を遷移することができる。 地図と測量の科学館 平成8年、国土地理院の敷地内に「地図と測量の科学館」がオープンした。この施設は、地図及び測量全体の博物館的な役割を持っており、陸地測量標条例施行以前の古地図についてもその一部が展示されている。 この地図と測量の科学館は土曜日及び日曜日も開館しており(定休日は月曜日)、市街地中心部から無料バスが運行されているなど、つくば市の観光スポットの1つに数えられている。特に、昨年秋には開場以来の累計入場者数が50万人を突破した。 地図と測量の科学館と情報サービス館とは棟続きになっており、利用者の便を図っている。 公共測量成果の保管委託 公共測量の成果は、当該公共測量を実施した計画機関が保管すべきところであるが、一般の行政文書には保存年限は数年程度にしか定められておらず、行政機関が過去の測量成果を全て保管するのは容易ではない。 国土地理院では、地方公共団体等が実施した測量の成果についても、その保管及び供覧を受託している。この施策はまだ十分に知られていないため、今後の普及活動が重要である。