著者
鐸木 道剛
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本の大主教ニコライ・カサートキン(1836-1912)が育てた日本人イコン画家山下りん(1857-1939)の先駆者のような形で、アレウト・カムチャツカ・クリルの主教インノケンティ(1797-1879)が育てたワシリー・クリューコフ(c. 1805-c. 1880)というアレウト人画家がいる。今回の調査によって、クリューコフとその周辺のアラスカのイコン画家たちはロシアから将来された原画を忠実に模写したことが明らかになった。これは山下りんのイコン制作態度と同じであり、ニコライはイコン制作に関しても先輩のアジアへの正教会伝道師インノケンティのイコン観を受け継いだと考えられる。8世紀ビザンティンに由来する表象観念が、アラスカと日本に同様に伝えられたことになる。