著者
佐藤 勲 長友 安雄 安藤 忠治 稲沢 昭
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚研究会誌 (ISSN:03888460)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.14-22, 1964

1) 豚の放牧による肥育は飼料の利用性, 発育, 斎度, 寄生虫, 皮膚病などにより問題があるとされていたが, 甘藷畑で放牧肥育を実施した結果, 1日平均659g~730gとすぐれた発育を示した。その発育に比較して飼料要求率は3.61~3.92とやや悪るく, 発育にバラツキが見られた。<br>2) 省力管理は期待できる。すなわち, 甘藷の収穫, 調理, 給与の手間がかからずに, しかも飼育管理でも1頭当り, 2時間53分, 1日1頭当り換算すると2分02秒であった。<br>3) 甘藷畑10aに肥育豚を10頭放牧して仕上げることができるかどうかは, 収量と放牧時期, 方法によるが, 本試験の結果では可能であり, 放牧豚はきわめて上手に甘藷を採食し, ロスが少なかった。<br>4) 甘藷畑放牧においては, 体重20kgより開始しても発育の停滞および事故はなかった。<br>5) 放牧期間中数回の降霜があったが, 降霜後の甘藷を採食しても事故はなく, また甘藷の品種による嗜好性の相違があった。<br>6) 肥育末期の舎飼は発育を良好にし, しかも飼料の利用性もよくなった。すなわち, BL区で1日平均増体重が14g, L区で12g半放牧区がすぐれ, 飼料要求率では, BL区で0.25, L区で0.3半放牧区がすぐれていた。<br>7) 甘藷の採食量は多く, 牧区拡張当日はやや過食の傾向があるので放牧方法を検討する必要がある。<br>8) 総給与量 (風乾量) に対し40%の甘藷を採食したが, 皮下脂肪が比較的うすく, 肉質良好, 腎臓脂肪が少なかった。<br>9) 寄生虫の被害は殆んどなかった。<br>10) 放牧のため発生したと考えられる疾病および事故はなかったが, 電気牧柵を利用した放牧であるため, 脱柵の習慣がついたものが生体重70kg時に1頭あった。これは甘藷を堀りながら前進するため架線が高いと知らぬまに脱柵していることから習慣となったものである。