著者
長堀 登 木村 健一郎
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.15-20, 1992-03-31

近年注目され始めたLD(学習障害)を中心に,現在の教育体制の中では,普通教育と特殊教育の狭間に位置し,新たな教育的配慮や援助を必要としている児童を,調査によってその実態・援助の現状を把握し,教育的対応の仕方,望ましい教育条件の考察を試みた。調査は二つの市にわたり,普通学級児童約5,200人の担任の先生を対象に,質問紙法により行った。調査の結果は,各学年とも20%前後の児童について学級担任の先生は,学校生活・学習指導上で何らかの不安を感じており,さらに,3%程の児童については,具体的な配慮や援助を必要と感じ,できる範囲での援助を実践していた。その3%の児童の状態は,軽度のハンディキャップを持っていたり,境界線児と言われる児童や,いわゆるLD(学習障害)と思われる児童(全体の0.64%)であった。 LD児と思われる児童の問題点としては,「落ち着きがない,集中力がない,自分の力でしようとしない,集団行動がとれない,学習意欲がない,わがまま,喧嘩などのトラブルが多い。」などがあげられた。普通学級の担任の先生は,僅かな時間でも利用して個別指導を行ったり,励まし,賞賛の声掛け,座席の配置工夫,班構成の工夫など涙ぐましい努力をされていたが,それにも限界があり,特にLDと思われる児童については,効果的な指導方法がわからず,教育的な援助を行うことが十分にできないでいる現状だと思われる。「個に応じた教育」を真にめざすならば,新たな教育的配慮・援助のための教育的施策の必要性を痛感する。多様な指導を必要としている現状に柔軟に対応できるような教育条件の整備,充実が切望されるとこであり,「通級学級に関する充実方策について」の答申を尊重し,迅速な施策の実現が重要な意味を持つものと考えられる。