著者
長堀 金造
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.31, pp.45-51, 1968-03

水田からの浸透水は反復利用されるもので局地的な減水深とかんがい面積から算定した水量をもって広域の用水量とすることは,過剰に用水量をみこむことになるので,水資源の有効利用の観点からいっても好ましくない. ゆえに広地域を対象にしたかんがい計画を樹立する際には水収支によって用水量を決定することが合理的な方法といえる. 以上の観点から,低平地水田地帯の水収支による用水量の実態調査を行なった結果,次の諸点が明らかとなった. 1)まず,水収支式は (Q2-Q1)+(G2-G1)+en,+⊿S=0 上式中,(G2-G1)+en,tn+⊿Sが広域水田の消費水量となる. 一般に低平地では(G2-G1)≒0 水量の安定した期間であれば⊿S≒0とみなせるから,本地域のような所では消費水量はen,tnと考えられる. 2)一方,モデル地区内の流量実測データより水収支計算によって求めた消費水量は,Iの期間(7月18日~22日)では水深になおして,11.8mmday,Iの期間(8月10日~14日)では11.0mm/day,Ⅲの期間(9月7日~11日)では7.1mm/dayの値となった. 3)他方,蒸発計蒸発量を基にして求めた蒸発散量 en,tn の結果はI期間が12.04mm/day,Ⅱ期間が11.62mm/day,Ⅲ期間が8.42mm/day,の結果となり,計器蒸発量を基にして算定した方が,3期問とも若干,en,tnが実測水収支の結果より値が大きい. しかし,それらの差は極めて小さい. 4)従って,本地域のように低平地水田地帯の消費水量はen,tnによるものであり,従ってG2-G1≒0⊿S≒0とみなせるものと考えられる. 5)以上から,本地域における消費水量は,en,tn程度のものでありながら,かんがい水量と排水量の両者が極めて多いことは注目すべきで,かんがい排水量を一適正化することが望まれる. 6)次に本地域の用水の反復利用量を検討してみたところ,平均的にみて,およそ5~6mm/dayの水量が反復利用されていることが明らかとなった. おわりに,本論文は昭和37年,著者が京大在職中に行なった巨椋池干拓地,かんがい排水の実態調査研究の一部であることを付記し,御援助いただいた巨椋池土地改良区の関係各位に謝意を表する次第である。