著者
稲田 秀俊 伊藤 利章 長尾 学 藤川 清三 荒川 圭太
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.381, 2005

我々は、酸性雪が越冬性植物に及ぼす影響を調べるため、冬小麦(<I>Triticum aestivum</I> L. cv. Chihokukomugi)緑葉の組織切片を用いて酸性条件下で耐凍性試験を行い、酸性雪ストレスによる越冬性植物の傷害発生機構の解析を進めてきた。これまでに冬小麦の緑葉を硫酸溶液(pH 2.0)の存在下で細胞外凍結させると融解後の生存率が著しく低下することを明らかにした。本研究では、気温の寒暖差の大きい初冬や初春に酸性融雪水中で植物が凍結融解される影響を見積もるため、冬小麦緑葉の切片を純水または硫酸溶液の存在下で平衡凍結融解を繰り返し行った。すると、硫酸溶液共存下では凍結融解を繰り返す度毎に緑葉の生存率は徐々に低下し、純水で処理したものに比べてより生存率が低下した。次に、冬小麦緑葉組織の凍結融解過程のどの段階で酸性化すると生存率が低下するかを調べるために、硫酸溶液を添加する時期を植氷前、融解時、融解後にそれぞれ設定して耐凍性試験を行い、緑葉組織の生存率への影響について評価した。その結果、細胞外凍結した冬小麦の緑葉組織では、融解時に酸性物質が存在することが傷害発生を助長させる要因となりうることが予想された。