著者
匂坂 勝之助 荒木 忠 大和田 琢二 藤川 清三
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

プラスチド イニシャル形成と低温度要求性:休眠覚醒後にプラスチド イニシャルの形成が始まるので、休眠覚醒のおこる低温度と覚醒のみられない環境条件下にポプラをおいて比較検討した実験で、休眠覚醒のみられないポプラではプラスチド イニシャルの形成は全く進行しないことがあきらかになった。プラスチド イニシャルは遊離状態で存在すること:ポプラの皮層部から遊離状態のプラスチド イニシャルを得た。プラスチド イニシャルの形成は多年生植物(樹木)で一般的にみられること:ダケカンバ、エゾニワトコ、スグリ、キタコブシ等の皮層細胞に休眠覚醒後にプラスチド イニシャルが存在することを明かにした。草木植物にプラスチド イニシャルが存在することを証明する予備的調査:ジャガイモ魂茎の形成期にアミロプラストの前駆体と思われる構造体の存在することを確かめた。この研究は現在継続中である。プラスチド イニシャル形成は各組織で同時に始まる:リンゴの花芽、葉芽及びシュートの皮層細胞でこのことを明らかにした。成熟プラスチドを経ないプラスチド イニシャルの形成:リンゴの花芽、葉芽及び皮層細胞から成熟プラスチドを経ない新しい形成過程を示す電子顕微鏡像を得た。この実験で、プラスチド イニシャルの形成に小胞体が直接関与していること及び小胞が活発に形成されてプラスチドイニシャルに融合している電顕像を得た。
著者
出原 信大 桑原 慎子 鈴木 伸吾 小髙 優子 藤川 清三 荒川 圭太
出版者
低温生物工学会
雑誌
低温生物工学会誌 (ISSN:13407902)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.155-160, 2017 (Released:2018-04-14)

It is known that some polyphenols with anti-ice nucleation activity decrease freezing temperature of the solution containing ice nucleators, resulting in maintenance of supercooling state of the solution for a long periods. In the previous study, recombinant proteins of Erwinia ananas ice nucleation protein, inaA with histidine-tag (His-inaA) were expressed in Escherichia coli cells and ice nucleation activity was detected in the cell suspension. In the present study, the purification and the characterization of His-inaA proteins from transformed E. coli cells were done to study the mechanism of anti-ice nucleation of these polyphenols in solutions containing inaA. When the extracts of E. coli cells expressing His-inaA were fractionated into soluble, membrane and inclusion body fractions, ice nucleation activities were detected in all three fractions. Then, His-inaA was purified from the soluble fraction by affinity column chromatography and ice nucleation activity of the purified His-inaA fraction was detected. Further, it is confirmed that anti-ice nucleation activity of polyphenols was detected in solutions containing His-inaA.
著者
稲田 秀俊 伊藤 利章 長尾 学 藤川 清三 荒川 圭太
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.381, 2005

我々は、酸性雪が越冬性植物に及ぼす影響を調べるため、冬小麦(<I>Triticum aestivum</I> L. cv. Chihokukomugi)緑葉の組織切片を用いて酸性条件下で耐凍性試験を行い、酸性雪ストレスによる越冬性植物の傷害発生機構の解析を進めてきた。これまでに冬小麦の緑葉を硫酸溶液(pH 2.0)の存在下で細胞外凍結させると融解後の生存率が著しく低下することを明らかにした。本研究では、気温の寒暖差の大きい初冬や初春に酸性融雪水中で植物が凍結融解される影響を見積もるため、冬小麦緑葉の切片を純水または硫酸溶液の存在下で平衡凍結融解を繰り返し行った。すると、硫酸溶液共存下では凍結融解を繰り返す度毎に緑葉の生存率は徐々に低下し、純水で処理したものに比べてより生存率が低下した。次に、冬小麦緑葉組織の凍結融解過程のどの段階で酸性化すると生存率が低下するかを調べるために、硫酸溶液を添加する時期を植氷前、融解時、融解後にそれぞれ設定して耐凍性試験を行い、緑葉組織の生存率への影響について評価した。その結果、細胞外凍結した冬小麦の緑葉組織では、融解時に酸性物質が存在することが傷害発生を助長させる要因となりうることが予想された。