著者
長尾 隆司
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.183-190, 2004-06-15 (Released:2017-01-31)
参考文献数
26

地球の長い進化の歴史の中で,厳しい環境に適応してきたものが現在まで生き残っており,その数は200 万種を超えるといわれている.その中のたった一つの種であるわれわれ人間も,かつては厳しい自然と対峙することによって自らを環境に適応させる能力を身につけてきた.しかし現在,われわれはその適応能力をほとんど使うことなく,技術によって厳しい自然から隔絶した快適な人工環境を作るという生き方を選んでいる.一方,昆虫は地球上のさまざまな環境の変化にそれぞれ巧みに適応した結果,100 万種以上もの種類に分かれて進化の一方の頂点に立っている.3 億5 千万年もの昔から厳しい自然環境の中を生き抜いてきたコオロギの生き方を通して,身の丈をはるかに超えてしまった私たち人間の生き残り戦略について考えてみたい.