著者
三浦 良造 本多 俊毅 中村 信弘 大橋 和彦 長山 いづみ
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、電力・天候・保険事の新しいリスクの取引と管理を目標に、必要となる基礎理論の構築とその実務への応用のための基盤作りを行った。現在までに論文の形式とした成果は以下の通りである。第一の研究成果は、α-percentile barrier optionの一般化としての「江戸っ子オプション(Edokko Option)」の理論価格の導出である。(Fujita and Miura論文。)これは、基本的に一定の期間内において原資産の値がある閾値よりも小さくなる割合がα-percentile以下であるかどうかに依存してペイオフが定まるデリバティブの価格を求めるものであるが、ここで開発した理論を用いれば、例えばある一定期間に雨が降った日数(イベント日数)を原資産とする天候デリバティブの価格計算が可能になる。第二の成果は、ジャンプが加わった拡散過程に資産価格が従う非完備市場における、投資家の最適ポートフォリオ問題の解析である。(Nakamura論文)。スパイクと呼ばれるような不連続的な価格変化は電力価格の特徴であるので、この理論を用いれば、電力市場等における最適取引やリスク管理、それらのリスクをヘッジするための天候デリバティブや保険料の評価等を行うことができる。第三の成果は、取引の流動性の確保についての分析である。(Ohashi論文)ここでは保険デリバティブについて、情報の非対称性に基づく理論モデルを構築し保険デリバティブが取引される条件を分析したが、情報の非対称性による流動性の低下は、重要性を増しているMBSの取引においても重要な問題である。この他に天候や電力に関するデータを整えた。今後、これらの実データを利用して、以上の基礎理論を天候デリバティブの価格決定や、発電事業の価値評価、保険料率の決定等の分析を行う予定である。