- 著者
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夷藤 翔
中村 信弘
- 出版者
- 一般社団法人 日本金融・証券計量・工学学会
- 雑誌
- ジャフィー・ジャーナル (ISSN:24344702)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.45-66, 2019 (Released:2019-04-18)
本研究では,Christoffersen et al. (2012)が扱ったダイナミック非対称tコピュラについて,Aielli (2013)のcDCCとの整合性が担保されるようにモデルを改善し,そのモデルに基づき,新興国国債市場の相互依存構造の動的特性を研究する.実証分析で焦点を当てる点は,(1)相関行列の時変性,(2)分布の裾での相互依存構造,その上下非対称性に関する有意性,(3)コピュラの違いが新興国国債ポートフォリオのパフォーマンスに与える影響,(4)高次モーメントを考慮した新興国国債ポートフォリオの構築によるパフォーマンスの改善可能性と為替変動リスクのヘッジの有無による影響,などである.これらの研究結果から,高次モーメントを考慮した為替ヘッジ付き新興国国債ポートフォリオの構築により,分布の裾や上下非対称な相互依存構造による負の影響を受けないことが明らかとなった.加えて,為替変動リスクをヘッジしない場合に比して相関が大きく低下することで高い分散投資効果を享受し,さらには,高次モーメントの踏まえた投資配分の決定により,相対的に高いパフォーマンスを得られる,という示唆を得た.