著者
長戸 かおる 箱田 直紀
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.439-444, 1984-12-01

サザンカ,カンツバキ,ハルサザンカ,ツバキのエステラーゼアイソザイムの変異に基づき,種間関係を明らかにした。カンツバキでは,バンド4が高頻度に出現したが,野生サザンカには出現しなかった。サザンカ園芸品種では,海外品種や紅色品種にバンド4の出現が見られたが,白色品種には見られなかった。従って,サザンカ園芸品種の成立には野生サザンカの選抜育種だけでなく,一部には,カンツバキの浸透交雑による関与のあったことが考えられる。 一方,ハルサザンカのザイモグラムの出現頻度分布は,ツバキと大変よく似ていて,ツバキとサザンカの雑種起原であることが確かめられた。しかし,一部にカンツバキの関与を受けたと思われるバンド4を持つ品種が見られた。 このように,一部では,カンツバキとの浸透交雑を通じて,多様なサザンカ園芸品種やハルサザンカの品種が作出されてきた様子が明らかとなった。
著者
長戸 かおる
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.79-85, 1982-03-01

ワヒスケ類は通常,ノハキ(Camellia japonica)の1園芸品種群として扱われているか,雄蕊の発育か悪く稔性か全くないか低いものか多く,また子房に様々の程度に毛かある点て大部分のノハキ園芸品種と区別される。その為,ワヒスケ類は時として独立種として扱われてきた。またその起原についても,ノハキとチャの雑種説やウイリアムノー(ノハキとサルウイノハキの雑種)に近いとする報告もあって,不明な点か多い。そこで本研究では,ワヒスケ頬の起原と分類上の位置を明らかにする為に,ワヒスケ類及ひノハキ属近縁種,特にノハキのアイソサイム変異を詳細に比較検討した。 エステラーゼに関しては,"太郎冠者"を除くワヒスケ類のサイモグラムは,ノハキて高頻度に見られるタイプであった。これに対し"大郎冠者"のザイモグラムは,ノハキては極めて稀であるか,トウノハキ・サルウインノハギ・ウイリアムノーて普通に見られるタイプであった。 アノトホスファターゼては,ワヒスケ頬て検出された6本のハノトは全てノハキにおいても見られた。またそのうちの3本はワヒスケ類とノハキたけて検出された。サイモクラムに関しては,7品種中4品種かノハキとの間にのみ共通なタイプを示した。また"大郎冠者"と"数寄屋"は他種に見られたいタイプであった。 以上の結果は,多くのワヒスケ類のサイモクラム変異かノハキのそれに最も近く,またノハキの変異内に含まれていることを示している。従って,多くのワヒスケ類はノハキの園芸品種中に起原したものと考えられる。しかし,多くのワヒスケ類のアノトホスファターセサイモクラムはノハキて比較的低頻度に出現するタイプであったことや,形態的にも他のノハキ園芸品種と区別されることは,ワヒスケ類かノハキの中でも特殊な一群を形成していることを示すものであろう。 "太郎冠者"については,2酵素のサイモクラムかノハキては非常に稀かあるいは全く見られないタイフてあり,ノハキと他種との雑種起原である可能性か考えられる。