著者
宮下 純夫 新井 孝志 長橋 徹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.47, pp.307-323, 1997-04-24
被引用文献数
17

北海道中央部を構成する日高帯には, 周囲の砂泥質堆積岩と同時期に形成された現地性緑色岩が多数分布している。これらは, 日高帯西縁のイドンナップ帯, 日高帯西部, 日高帯東部の3帯の緑色岩に区分される。年代は, イドンナップ帯のものが白亜紀中頃, 日高帯西部は後期白亜紀後半, 日高帯東部は古第三紀暁新世-始新世と推定される。緑色岩の全岩組成はいずれもN-MORBの特徴を示す。これらは, イドンナップ帯においてはユーラシアプレートとイザナギ-クラプレートとの洩れ型トランスフォーム境界, もしくはイザナギ-クラ海嶺, 日高帯西部については沈み込み境界に対して高角な海洋プレート内の洩れ型トランスフォーム断層, 日高帯東部についてはクラ-太平洋海嶺に由来すると推定される。日高帯は, 後期白亜紀後半から古第三紀にかけて海嶺の多重衝突を経験した特異な付加体で, 日高火成・変成作用の発生によりこの付加体は大陸性地殻へと転化した。これは, 海嶺の相次ぐ衝突による付加体深部の異常な温度上昇, 大量の陸源砕屑物の供給による付加体の急激な成長, 東側から古千島弧が接近してきたなどの複合によっていると考えられる。