著者
長瀧 重博
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

南極で観測を続けるIceCube Collaborationは2013年4月、遂に大気ニュートリノ以外の起源と思われる2つのイベント(PeVニュートリノ)の検出を報告しました。これに引き続き、IceCube Collaborationは解析の続報を発信しています。その到来方向をマッピングしてみますと、まだ有意性は低いものの、銀河中心付近からやってくるニュートリノイベントが特に多いようにも見えます。本研究にて、我々は銀河中心では超新星爆発頻度が高く、多くの超新星残骸が存在していることに着目しました。その上で特に巨大な超新星爆発「極超新星爆発」がこの高エネルギーニュートリノの起源天体であると予想し、その理論計算を行いました。我々はこれまでの超新星残骸研究で開発してきた非線形粒子加速コードを極超新星残骸に応用し、高エネルギー粒子がどれだけ極超新星残骸で生成されるかを評価しました。また得られた宇宙線が銀河中心エリアに存在するガスと相互作用し、どれだけ高エネルギーニュートリノ・ガンマ線を生成するかを拡散方程式を解くことにより評価しました。得られたニュートリノの結果をIceCubeのデータと比較し、一方ガンマ線についてはGeV-TeVガンマ線観測からの制限に抵触しないか、現在慎重な解析を行いました。その結果、観測されているガンマ線のフラックスをこのモデルで満たすことは出来るが、それを説明するとニュートリノのフラックスは観測よりも桁で小さくなることが分かりました。この結果は銀河中心付近のニュートリノが系外起源であることを示唆しています。今後は更に上記で得られた成果を検討し、査読論文に投稿する予定です。本研究期間中にその論文は仕上がりませんでしたが、今後論文が受理されましたら謝辞には必ず本研究課題に言及致します。