著者
長田 俊彦 廣田 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.796-800, 2021-12-28 (Released:2021-12-28)
参考文献数
10

症例は69歳,男性。併存症は慢性腎不全(維持透析),洞不全症候群(DDD型ペースメーカー留置)。コハク酸シベンゾリン(以下CZ)を約1カ月間内服後に倦怠感と不穏が出現した。来院時,ペーシング不全を伴う高度徐脈と低血糖,高カリウム血症を認めた。高カリウム血症を是正後もペーシング不全と低血糖が遷延したため,CZ中毒と判断して第3,4病日に血液濾過透析(以下HDF)を施行し,以降,ペーシング閾値は低下して低血糖も改善した。初診時の血中CZ濃度は1,294ng/mLと高かったが,各HDF前後で血中CZ濃度は低下した。CZは血液透析による除去効率が低い薬剤とされるが,本症例と同様にHDFが薬物の除去や中毒症状の改善に寄与した報告が散見される。本症例のようにペーシング不全により高度の循環障害を伴うCZ中毒では各臓器での薬物クリアランスの低下も予想されるため,HDFが奏効する可能性があると考えられる。