著者
稲葉 俊哉 長町 安希子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.1020-1026, 2019

<p>魑魅魍魎たるモノソミー7も,最初の報告から半世紀が経ち,ようやく本態が見えてきた。理解の鍵は,ハプロ不全(haploinsufficiency)による,複数の発がん抑制遺伝子の機能喪失である。マイクロアレイCGH法と次世代シーケンサにより,<i>Samd9</i>と<i>Samd9-like</i>(<i>Samd9L</i>),<i>Ezh2</i>,<i>MLL3</i>,<i>CUX1</i>の5責任遺伝子候補が同定され,遺伝子改変マウスなどにより立証された。<i>Samd9</i>と<i>Samd9L</i>は,片アレルの喪失でマウスに老年期MDSを起こす一方,その機能更新型の変異は小児の骨髄機能不全をもたらし,高率に小児MDSが発症する。モノソミー7にとどまらず,難解なMDSを理解する上でも鍵となる遺伝子として注目される。一方,エピゲノム調節因子である<i>Ezh2</i>と<i>MLL3</i>は,p53やRas経路の異常を伴い,腫瘍化が運命付けられた造血細胞の中で,病状の進展に寄与すると考えられる。</p>