著者
長総 義弘 紺野 慎一 菊地 臣一
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

セロトニンとセロトニン拮抗薬投与前後での神経根内血管と血流量の変化を検討した。方法:雑種成犬35頭。A群;非手術群、B群;バルーンのみを挿入したsham群、C群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを除去した群、D群、E群、F群、G群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを膨らませたままの群の7群を設定した。解析時にA, B, C, D群にはセロトニン0.5μM、E群、F群はセロトニン投与前にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μg/ml、0.05μg/ml)、G群にはセロトニン投与後にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μ9/ml)を投与した。デジタルハイスコープを用いて仙椎神経根の血管を記録し、血管径と血流量の計測を行なった。圧迫部位の神経根を採取し組織学的検討を行った。結果:[血管径]AとB群はセロトニン投与後、血管が拡張した。CとD群では、血管が収縮した。EとF群では、血管収縮が抑制された。G群では、血管が収縮は抑制されなかった。[血流量]AとB群でセロトニン投与後に血流量は減少しなかった。CとD群では血流量は減少した。E、F群およびG群では、血流量が増加した。電子顕微鏡学的検討では、馬尾圧迫下の神経根内血管のtight junctionが破壊されていた。考察:セロトニンは圧迫のない神経根内血管は拡張させ、慢性圧迫下の神経根内血管では血管収縮と血流量の減少を引き起こす。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、セロトニンによる慢性圧迫下での神経根内血管収縮反応と血流量の減少を抑制した。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、馬尾・神経根の血流低下により引き起こされる間欠跛行を改善させる可能性がある。今後、腰部脊柱管狭窄の保存療法の1手段として、有効性が期待できる。