著者
紺野 慎一
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.32-38, 2009 (Released:2009-12-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

腰部脊柱管狭窄の診断のゴールドスタンダードは存在しない.腰部脊柱管狭窄は画像のみでは診断できない.そこで,腰部脊柱管狭窄の診断サポートツールが開発された.医師用と自記式の患者用質問票の2種類ある.両者とも高い感度と特異度を有している.これらの診断サポートツールを使用することにより,患者の自己診断が可能であり,プライマリケアにおいて腰部脊柱管狭窄の診断に役立つと考えられる.
著者
紺野 慎一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2103-2106, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
7

疼痛は,一般的に侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,そして,非器質性疼痛の3つの病態に分類され,慢性疼痛の大部分は,この三者の要素を有している.中脳辺縁系ドパミンシステムは無意識に機能しているが,何らかの原因で機能しなくなると,痛覚過敏の状態に陥る.ドパミンシステムが機能不全に陥る原因としては,ストレス,不安ならびにうつが挙げられる.うつ,不安ならびにストレス等が存在すると,ドパミンは痛み刺激に十分に反応せず,その結果,μオピオイドは産生されず,痛みの抑制機構が働かない.
著者
長総 義弘 紺野 慎一 菊地 臣一
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

セロトニンとセロトニン拮抗薬投与前後での神経根内血管と血流量の変化を検討した。方法:雑種成犬35頭。A群;非手術群、B群;バルーンのみを挿入したsham群、C群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを除去した群、D群、E群、F群、G群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを膨らませたままの群の7群を設定した。解析時にA, B, C, D群にはセロトニン0.5μM、E群、F群はセロトニン投与前にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μg/ml、0.05μg/ml)、G群にはセロトニン投与後にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μ9/ml)を投与した。デジタルハイスコープを用いて仙椎神経根の血管を記録し、血管径と血流量の計測を行なった。圧迫部位の神経根を採取し組織学的検討を行った。結果:[血管径]AとB群はセロトニン投与後、血管が拡張した。CとD群では、血管が収縮した。EとF群では、血管収縮が抑制された。G群では、血管が収縮は抑制されなかった。[血流量]AとB群でセロトニン投与後に血流量は減少しなかった。CとD群では血流量は減少した。E、F群およびG群では、血流量が増加した。電子顕微鏡学的検討では、馬尾圧迫下の神経根内血管のtight junctionが破壊されていた。考察:セロトニンは圧迫のない神経根内血管は拡張させ、慢性圧迫下の神経根内血管では血管収縮と血流量の減少を引き起こす。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、セロトニンによる慢性圧迫下での神経根内血管収縮反応と血流量の減少を抑制した。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、馬尾・神経根の血流低下により引き起こされる間欠跛行を改善させる可能性がある。今後、腰部脊柱管狭窄の保存療法の1手段として、有効性が期待できる。
著者
紺野 慎一 菊地 臣一
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.89-94, 2003 (Released:2008-06-30)
参考文献数
9

神経根ブロック,硬膜外ブロックおよびブロックを行わずに治療を行った例の3群間の治療成績の差異を明らかにすることを第一の目的とした.第二には,神経根ブロックにおけるステロイド使用の意義を明らかにすることを目的に,椎間板ヘルニアに対する神経根ブロックの治療効果をステロイド使用群と非使用群とで比較した.腰椎椎間板ヘルニアに対するブロック療法群と非ブロック療法群の成績は,治療後6カ月の時点ではブロック療法群の方が有意に成績が良かった.しかし,治療後2年では,両者の差はなかった.ブロック群では,症状軽快または消失までの期間が非ブロック群に比べ有意に短かった.また神経根ブロック群の方が硬膜外ブロック群よりも有症状期間をさらに短縮していた.神経根ブロックにおけるステロイド使用の意義は,椎間板ヘルニアでは少なかった.
著者
大谷 晃司 菊地 臣一 紺野 慎一 矢吹 省司
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.127-131, 2004 (Released:2008-02-06)
参考文献数
10

本研究の目的は,腰椎椎間板ヘルニア手術後10年以上経過例に対し,Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)を用いて腰痛機能関連QOLを検討することである.対象は,腰仙椎部椎間板ヘルニア108例(ヘルニア摘出術の非固定群32例,ヘルニア摘出術+後側方固定術の固定群76例)である.追跡調査率は58%であった.手術例の最終調査時(術後平均14年)のRDQの偏差得点は54.1±6.4であった.偏差得点50点以上,すなわち,一般住民の腰痛による日常生活の障害度と同様か,それより軽度であった症例の頻度は93例(86%)であった.一方,非固定群のRDQの偏差得点は54.0±7.4,固定群のそれは54.2±6.2であり,両群間に統計学的有意差は認められなかった.腰椎椎間板ヘルニア手術の長期経過例の腰痛関連QOLは,固定術併用の有無にかかわらず,一般住民の腰痛と同等,あるいはむしろ軽度である症例が多数を占めていた.