著者
長谷川 守文
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.547-552, 2017-07-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
47

フィトアレキシンの単離・構造解析に関する研究は20世紀後半に盛んに行われ,非常に多くの成果が蓄積された.21世紀に入ってからのフィトアレキシン研究はその生合成や誘導機構に関するものが中心になってきており,いわゆる「モノ取り」的な研究はやり尽くされた感があった.しかし,近年イネ科やアブラナ科植物の研究で,従来考えられていたよりも多様な化合物がフィトアレキシンとして機能していることがわかってきた.
著者
小原 直美 光原 一朗 瀬尾 茂美 大橋 祐子 長谷川 守文 松浦 雄介
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.94-101, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 9

アグリボEX(株ビスタ製)は酵母抽出液を原料とする植物活力剤であり,発根促進,徒長抑制などとともに,病害抑制効果もみられる.病害抑制機構としては,この酵母抽出液(アグリボEX)自体に抗菌作用がないことから,本処理が植物が本来有する抵抗性を誘起して効果を発揮するものと考えられた.この酵母抽出液にタバコ葉片を浸漬処理すると,塩基性PR-1, -2および-6遺伝子の発現が誘導された.これら塩基性PR遺伝子群はエチレンで誘導されることが知られているので,エチレン発生剤であるエテホン処理やエチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(STS)を処理し,タバコPR-1, -2, -3および-5タンパク質群の増減を調べた.その結果,エテホン処理で誘導される分子種がこの酵母抽出液処理で誘導され,その誘導はSTS処理により阻害されることが分かった.また,この酵母抽出液自身からエチレンが発生すること, およびこの処理により植物からのエチレン発生が促進されることが認められた.これらの結果から,この酵母抽出液はエチレンシグナル伝達経路を介して植物の病害抵抗性誘導に寄与するものと考えられる.