著者
松浦 雄介
出版者
西日本社会学会
雑誌
西日本社会学会年報 (ISSN:1348155X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.21-32, 2019 (Released:2020-03-27)
参考文献数
26

近年、文化遺産が観光やまちづくりなどの目的に活用されることが多い。この傾向は、社会学および関連領域で「文化の資源化」として論じられてきた。文化遺産を資源として活用するとき、1つのジレンマが発生しうる。一方で、文化遺産を活用して観光やまちづくりを推進することは、文化の道具化・商品化につながりかねない。他方で、文化の自律性という大義のもとに文化遺産の積極的活用を否定することは、「文化遺産は誰のものか?」という批判を招くことになりかねない。本稿の目的は、このジレンマについて考察することである。最初に文化と経済の関係の構造的変化を概観し、次に文化の資源化がもっとも劇的に起こった事例としてイギリスおよび日本の産炭地を取り上げる。さらにイギリスにおける「遺産論争」やL・スミスなどの議論を検討し、文化遺産の保存と活用について新たな捉え方を提示する。最後に文化遺産の活用に商品化とコモン化の2つの面があることを明らかにし、文化遺産を活用した観光まちづくりが、これら2つの効果を及ぼしうることを論じる。
著者
松浦 雄介
出版者
京都大学文学部社会学研究室
雑誌
京都社会学年報 : KJS = Kyoto journal of sociology
巻号頁・発行日
vol.12, pp.73-90, 2004-12-25

In this paper I investigate the mode of memory and style of life in early works of Furui Yoshikichi, a contemporary Japanese novelist. Contemporary society could be characterized by its indeterminacy. This indeterminacy appears on the level of everyday life in various ways. Memory is a point of view suitable for observing the indeterminacy of society. As H. Bergson once said, memory enables free action and creates the rhythm of life. But it is common that one's memory is interrupted and fragmented in modern society, which is driven by endless changes. Interruption and fragmentation of memory is a symptom of indeterminacy of a society. We can understand the latter by analyzing the former. The purpose of this paper is to consider the characteristics of indeterminacy in contemporary society through observing how their memories are interrupted and fragmented. This is the reason for why I focus on the mode of memory in Furui's novels. In Furui's works, relationships between contradictory values-such as life
著者
小原 直美 光原 一朗 瀬尾 茂美 大橋 祐子 長谷川 守文 松浦 雄介
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.94-101, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 11

アグリボEX(株ビスタ製)は酵母抽出液を原料とする植物活力剤であり,発根促進,徒長抑制などとともに,病害抑制効果もみられる.病害抑制機構としては,この酵母抽出液(アグリボEX)自体に抗菌作用がないことから,本処理が植物が本来有する抵抗性を誘起して効果を発揮するものと考えられた.この酵母抽出液にタバコ葉片を浸漬処理すると,塩基性PR-1, -2および-6遺伝子の発現が誘導された.これら塩基性PR遺伝子群はエチレンで誘導されることが知られているので,エチレン発生剤であるエテホン処理やエチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(STS)を処理し,タバコPR-1, -2, -3および-5タンパク質群の増減を調べた.その結果,エテホン処理で誘導される分子種がこの酵母抽出液処理で誘導され,その誘導はSTS処理により阻害されることが分かった.また,この酵母抽出液自身からエチレンが発生すること, およびこの処理により植物からのエチレン発生が促進されることが認められた.これらの結果から,この酵母抽出液はエチレンシグナル伝達経路を介して植物の病害抵抗性誘導に寄与するものと考えられる.
著者
蘭 信三 外村 大 野入 直美 松浦 雄介 上田 貴子 坂部 晶子 高野 和良 高畑 幸 飯島 真里子 花井 みわ 竹野 学 福本 拓 大久保 明男 倉石 一郎 山本 かほり 田村 将人 田村 将人
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の成果は以下のようである。まず、(1)第二次世界大戦後の東アジアにおけるひとの移動は日本帝国崩壊によって策定された新たな国境線によって引揚げ、送還、残留、定着という大規模な人口移動と社会統合がなされたことを明らかにした。しかし、(2)例えば日韓間の「密航」や中国朝鮮族居住地域と北部朝鮮間の移動のように、冷戦体制が整うまでは依然として残る個々人の戦前期の生活戦略による移動というミクロな側面も継続されていたことを明らかにした。そして、(3)帝国崩壊後も中国に残留した日本人の帰国のように、それは単純に「遅れた帰国」という戦後処理(コロニアリズム)の文脈だけではなく、日中双方における冷戦体制崩壊後のグローバル化の進行という文脈、という二つのモメントに規定されていたことを明らかにした。