著者
市川 尚斉 武藤 周 篠崎 一雄 松井 南 中澤 美紀 近藤 陽一 石川 明苗 川島 美香 飯泉 治子 長谷川 由果子 関 原明 藤田 美紀
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.428, 2007

優性突然変異を引き起こすミューテーションは、遺伝子ファミリーを形成する遺伝子群のゲノム的機能解析など、遺伝子破壊型のタギング法では表現型が現れない遺伝子の機能解析に欠かせないテクニックである。我々は総合的な遺伝子の機能付加を目指して、約1万種の独立シロイヌナズナ完全長cDNAからなる標準化cDNAライブラリーをアグロバクテリアのバイナリーベクター上で作成した後、このバクテリアライブラリーをシロイヌナズナに花感染させることでシステマティックに形質付与を起こさせる方法として、Fox Hunting Systemを開発した。T1世代の植物を15,000ライン以上観察したところ、可視変異の起きた1,487ラインを単離した。そのうち本葉でうす緑色の変異を起こした115ラインに関して次世代植物の観察を行ったところ、59ライン(51%)が優性もしくは半優性にT1表現系を再現した。cDNAの再導入によって表現型が再現したラインの1つは、ペールグリーンの性質の他に花芽形成が早まり、徒長成長も示すことが判明した。遺伝子配列を解析したところ、このcDNAは未知の遺伝子で分泌たんぱく質様の構造を持つ95アミノ酸配列の小型のたんぱく質をコードしていることがわかった。この新規機能遺伝子を例にしてFOX-hunting systemの有効性を議論する。