著者
近藤 泰三 長谷川 篤美
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.279-291, 2013 (Released:2014-12-05)
参考文献数
17

東日本大震災により全県に及ぶ甚大な被害を被った3県(岩手,宮城,福島)の病院で100床以上の病床を持ち,かつ,医療情報システムを利用しオーダエントリもしくは電子カルテ運用を行っている病院に宛て医療情報システムの被災状況アンケートを送付し回収した.回収率は66%,回収数は55病院であった.津波被害がなければ,病院建物に損傷があっても病院全体が業務遂行不能になることはなく,サーバ自体の損傷も軽微であった.データベースも損傷なく維持されていた.ネットワーク自体も損傷した建物を除き維持されていた.しかし,医療情報システム運用可能な病院でも,非常電源装置の不安定作動,サーバ室の空調への非常電源未接続,ネットワークの末端スイッチへの非常電源未接続等により,約60%の病院では震災後早期の医療情報システム使用が困難であった.今後業務継続計画(BCP)として医療情報システムが災害後早期に使用できる環境整備が重要であり,データベース損失に備えた遠隔バックアップを早急に考慮すべきである.