著者
長谷部 亮 飯村 康二
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.42-48, 1986-02-05
被引用文献数
3 3

水稲の生育にとって重要な役割を果たすケイ酸が土壌溶液中にどのくらいの濃度であれば健全な水稲が生育するのかをみる目的で,水耕培養液を土壌溶液に模してケイ酸供給濃度を一定に保ち水稲の生育経過,収量およびケイ酸吸収量を調べた。水耕培養は容量300lの流動水耕培養装置を用いた。試験区として水耕培養液のケイ酸濃度0,3,10,30,100 ppmの5区を設けた。ケイ酸濃度は移植後から収穫期までほぼ毎日調べ,常に所定の濃度に保つようにした。結果を要約すれば次のとおりである。1)ケイ酸濃度は3 ppmに保たれていれば,10,30および100 ppm区と比べ水稲の生育に大差はなく健全な水稲となった。2)ケイ酸濃度30 ppm区および100 ppm区では葉身のケイ酸含有率30%以上,全ケイ酸含量13gという大量のケイ酸の蓄積があった。3)ケイ酸濃度0 ppm区ではケイ酸欠乏水稲の生育症状を呈し,収穫も低く稔実歩合も75%と最低であった。4)水稲葉身,葉鞘+茎のケイ酸含有率は30 ppm区までは水耕液中のケイ酸濃度の対数に比例した。5)水稲はケイ酸を積極的に吸収し,受動的に吸収する場合ははるかに小さく,また積極吸収は生育初期よりも後期のほうが強かった。