著者
門平 靖子 森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.20-27, 2018 (Released:2018-02-15)
参考文献数
17
被引用文献数
4

要約:近年,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)に直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)を使用する機会が増えていると推測される.VTE 診療において,DOAC 内服下にアンチトロンビン(AT),プロテインC(PC),プロテインS(PS)などの先天性血栓性素因の検索が行われる場合,これらの凝固阻止因子活性はDOAC の種類や測定原理の違いにより影響を受けることがあり,先天性血栓性素因の診断が困難となる危険性がある.当研究室における,リバーロキサバン,エドキサバン,アピキサバンが各凝固阻止因子活性に与える影響についての検討では,Xa 法によるAT 活性は薬剤血中濃度に依存して偽高値を示し,PC 活性,PS 活性は,凝固時間法による測定においてDOAC の影響を受け偽高値となる可能性が示唆された.このような過大評価による疾患の見逃しを防ぐためにも,DOAC がAT,PC,PS 活性に与える影響およびこれらの検査項目の測定原理を十分に把握しておくことは極めて重要であり,DOAC 内服下に検査を行う場合は,DOAC 血中濃度が低下したタイミングでの検体採取が望まれる.