著者
森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.1340-1346, 2020-07-10 (Released:2021-07-10)
参考文献数
6
著者
林 朋恵 森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.48-54, 2014 (Released:2014-03-03)
参考文献数
41

要約:プロテインC(PC)凝固制御系は,血中に産生されたトロンビンが血管内皮細胞上のトロンボモジュリンと結合してはじめて発動される,いわばネガティブフィードバックの系であり,生体内における微妙な凝固反応に対応し得る非常に柔軟なしくみといえる.PC 凝固制御系因子の欠損あるいは異常は,生体内における向血栓性を高め,時に致死的な血栓症をもたらす.本稿では代表的なPC 凝固制御系因子であるPC, プロテインS(PS)両者の欠損症および活性化プロテインC(APC)レジスタンスの診断およびその臨床像について概説するとともに,APC の多面的な機能に注目した臨床試験の歴史についてもふれてみたい.
著者
門平 靖子 森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.20-27, 2018 (Released:2018-02-15)
参考文献数
17
被引用文献数
4

要約:近年,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)に直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)を使用する機会が増えていると推測される.VTE 診療において,DOAC 内服下にアンチトロンビン(AT),プロテインC(PC),プロテインS(PS)などの先天性血栓性素因の検索が行われる場合,これらの凝固阻止因子活性はDOAC の種類や測定原理の違いにより影響を受けることがあり,先天性血栓性素因の診断が困難となる危険性がある.当研究室における,リバーロキサバン,エドキサバン,アピキサバンが各凝固阻止因子活性に与える影響についての検討では,Xa 法によるAT 活性は薬剤血中濃度に依存して偽高値を示し,PC 活性,PS 活性は,凝固時間法による測定においてDOAC の影響を受け偽高値となる可能性が示唆された.このような過大評価による疾患の見逃しを防ぐためにも,DOAC がAT,PC,PS 活性に与える影響およびこれらの検査項目の測定原理を十分に把握しておくことは極めて重要であり,DOAC 内服下に検査を行う場合は,DOAC 血中濃度が低下したタイミングでの検体採取が望まれる.
著者
高附 磨理 荒木 俊彦 菅野 陽 安本 篤史 森下 英理子 塩田 宏嗣
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.487-491, 2022 (Released:2022-06-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

基礎疾患のない48歳男性.ChAdOx1 nCoV-19ワクチン1回目を接種した10日後より頭痛を自覚.血液検査で,血小板数の低下,Dダイマーの上昇を認め,DICも合併していた.頭部単純CTにて左頭頂部に微小出血,造影CTにて左横静脈洞,左S状静脈洞に静脈洞血栓を認めた.その後施行した頭部MRIにて,左頭頂部に静脈性出血性梗塞,くも膜下出血,全身造影CTにて門脈血栓症,腎梗塞の所見を認めた.新型コロナワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症(thrombosis with thrombocytopenia syndrome,以下TTSと略記)と診断し,手引きに準じて治療を行い,自宅退院となった.本症例は,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンに伴うTTSの国内1例目と考えられる.
著者
森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.1236-1246, 2021 (Released:2021-09-08)
参考文献数
50

COVID-19では血液凝固異常を合併する頻度が高く,血栓症が多発することが知られている。そしてそのメカニズムは複雑であり,低活動性・無動化といった物理的要因に加えて,炎症による血液凝固の活性化,血管内皮障害の関与が大きい。血栓症はpulmonary thromboemobolism,deep vein thrombosisのほかに,動脈血栓症も発症し,さらには肺胞毛細血管内微小血栓も認める。COVID-19の病態の悪化には血栓症が関わる可能性があるため,中等症ならびに重症患者では予防的抗凝固療法は必須である。予防的な抗凝固療法を実施しても肺塞栓症の発生頻度は依然として高いことより,根底にある炎症の制御と血管内皮保護を今後抗凝固療法に併用する必要があるだろう。
著者
森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.774-783, 2018

<p>ワルファリンに代わる新しい経口抗凝固薬として直接経口抗凝固薬(DOAC)が登場したが,大出血の合併症は依然として認められ,より出血リスクの少ない抗凝固薬の候補として近年第XI因子阻害薬が注目されている。静脈血栓塞栓症(VTE)を発症した患者の約2~3割でがんの合併を認める。最近,担がん患者のVTE再発または大出血の複合アウトカムを検討した国際大規模臨床試験にて直接活性化第X因子阻害薬エドキサバンが低分子へパリンに対して非劣性であることが明らかにされた。また,抗凝固薬の重大な副作用として出血があり,緊急中和治療は重要な問題である。最近,ワルファリンの中和剤として4因子プロトロンビン複合体製剤が利用できるようになり,DOAC内服患者の中和剤としても期待できる。さらに,ダビガトランの特異的中和剤としてイダルシズマブが登場し,ダビガトランの抗凝固作用を迅速かつ完全に中和することが明らかとなった。</p>