- 著者
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門田 功
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
昨年に引き続き、赤潮の原因毒であるブレベトキシンBの合成研究を行った。デオキシリボースを光学活性源として、BC環部に相当するα-クロロスルフィドとFG環部アルコールをそれぞれ合成した。両者を銀トリフレートを用いて縮合し、O,S-アセタールを合成した。さらに数段階でアリルスズを導入して分子内アリル化反応のための基質を合成した。この化合物を銀トリフレートで処理したところ84%の収率で環化反応が進行し、目的の化合物が立体選択的に得られてきた。得られた化合物に対し、Grubbs触媒による閉環メタセシスをおこなってB-G環セグメントを得ることができた。さらに数段階を経てA環を構築し、A-G環部とした。これをJK環部に相当するカルボン酸とエステル縮合し、さらに数段階を経て環化前駆体を合成した。この化合物に対して先ほどと同様に分子内アリル化と閉環メタセシスをおこない、ブレベトキシンBのポリエーテル骨格を得ることができた。この化合物に対してラクトン化、脱保護、アリルアルコールの選択的酸化を行い、ブレベトキシンBの全合成を完了した。合成品の各種スペクトルデータは天然のものと完全に一致した。また、同様の方法論を用い、イェッソトキシンおよびアドリアトキシンのFGHI環部の収束的合成に成功した。これらの化合物は下痢性貝毒の原因毒として、二枚貝養殖に多きな被害を与えており、ブレベトキシンBと同様深刻な社会問題となっている。本研究により、これら海産毒の活性発現機構に関する研究が進展するものと期待される。