著者
門田 安弘
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、平成元年度と2年度の2年間にわたるもので、日本の自動車産業における原価計算と原価管理のシステムを、個々の自動車企業を訪問調査して究明するものである。具体的には、トヨタ、日産、マツダ、ダイハツ、鈴木、クボタ(トラクタ-工場)などを取材した。得られた研究成果(知見)は、次のとおりである。1、原価計算については、各社とも標準原価計算を採用しているが、製造原価に占める各原価要素の構成比率で材料費が大きなものになっているなどのことから、原価管理の重点の移動がみられる。標準原価計算が財務会計目的のみに用いられ、原価管理上の意義が小さくなっている。2、原価管理では、新製品の開発段階における原価企画のシステムが重要になっており、このシステムの全容を解明することができた。これは日本独特のオリジナルなもので、利益計画から出発する点が特徴である。次に、原価改善という製造段階の原価低減のシステムも解明できた。これは、標準原価計算のように原価維持を目的とするものではなく、トヨタ生産方式ないしジャストインタイム生産方式や目標管理と結びついて、やはり利益計画を出発点とした毎期の原価低減活動である。3、自動車産業におけるCIM(コンピュ-タ-統合生産)とJIT(ジャストインタイム生産方式)の実態を究明した。CIMに関する投資の経済計算や導入プロセスの調査も行った。また、CIMの中の生産計画についてMRP(資源所要量計画)のデ-タベ-スがあり、これと原価計算の関連についても調査した。4、さらに、この実態調査を通じて、自動車企業の販売管理システム、財務管理システム、国際生産戦略、組織と人事管理システムなどについても解明した。以上の4つについて、次ペ-ジに示す研究発表も行った。