著者
門田 寅太郎 谷川 茂
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.115-123, 1943 (Released:2007-05-31)
参考文献数
12

1. 農林省園藝試驗場に於て里芋の開花結果に關する研究の手始めとして開花容易なる南洋産赤莖及青莖種を用ひ昭和16年準備をなし17年交配及實生を試み併せて花及種子の觀察をも行つた。2. 里芋は親芋の頂部に近き肩の所より花芽を形成し1花序4~5花,順次花梗を抽出して2~3日置きに開花する。3. 里芋の肉穗花は雌花先熟にて開苞雄花成熟の前日の朝が授粉の適期の如くである。4. 1穗の雌花數 (子房數) は150~200にて雄花數320~340であつた。5. 1雄花は平均6ケの雄蕋及葯の融合せるものにして各1ケの葯孔を有す。6. 花粉は角刺を有し外觀甘藷のそれに類似し直徑約25ミユーであつた。7. 子房は前後縱にくびれ不完全なる2室を成し側膜胎座をなす。8. 果實は開花後35日にて完熟する。9. 1果約200粒の種子を得た。10. 種子は淡褐黄色牛蒡種子型12本の縱溝を有し1000粒0.25瓦にて罌粟よりも小さい。11. 種子は採り播を行へば發芽良好なるも7グ月後には枯死してゐた。12. 甲析は單子葉にて子葉の形はブラシカに似る。13. 初期の生長は遲々たるも半年後には相當の大さに達する。14. 實生の變異は實に大きく赤莖×青莖のF1に於て黒紫色の個體が半數以上現れた。