著者
間苧谷 徹 町田 裕
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-48, 1980
被引用文献数
6 15

本実験は, 夏季の土壌乾燥が, ウンシュウミカンの果実品質に及ぼす影響を検討し, 更に, はち植え幼木の実験で示した既報(14)のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> を, ほ場の樹で再検討した.<br>1. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と1果重(果径), 屈折計示度及び遊離酸含量との間には, 9月7日及び12月6日の採取果とも高い相関関係が認められた. 9月と12月とで, ψ<sub>max</sub> と屈折計示度の直線は -14bar 前後で交差し, ψ<sub>max</sub> が -14bar より低下した樹では, 12月の屈折計示度の方が9月より低下した. これに対して, 9月と12月の遊離酸含量の間には, 平行移動に似た関係が存在した.<br>2. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果実比重との間には, ψ<sub>max</sub> -11bar 前後を屈曲点に2種類の曲線関係が存在した. すなわち, ψ<sub>max</sub> が -11bar 前後までは,ψ<sub>max</sub> の低下に伴い果実比重は小さくなったが, ψ<sub>max</sub> がそれ以下になると, 逆に果実比重は増加していった.<br>3. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果皮の着色程度との関係は余り密接でなく, 両者の間を直線関係とみなして相関係数を求めると, -0.7410であった.<br>4. 果実品質を余り低下させないですむ限界のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> は -7bar 以上であり, ψ<sub>max</sub> をそれ以下にしない水管理が重要である. 出来れば, ψ<sub>max</sub> が-5.5bar 前後でかん水することが望ましい.<br>5. ψ<sub>max</sub> が -5.5bar に低下した後, 3mm/day のかん水で, ψ<sub>max</sub> を -5bar 前後に維持出来た. また, このかん水量で適湿区と近似した品質の果実が生産出来た.