著者
町田 裕璃奈 日野 麻美 堀 成美 奥村 貴史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.725-732, 2022-03-15

2020年に生じた新型コロナウイルスによるパンデミックは,世界各国に大混乱を引き起こした.日本の行政機関においても,対応のため様々な業務が発生し,とりわけ,保健所ではファックスを中心とした業務慣行の非効率が注目された.そこで厚生労働省は,感染症対策の最前線にあたる医療機関や保健所の負担軽減を目指し,ウェブシステムを新規開発しその代替を図った.しかし,業務知識を欠いたまま設計したシステムは,実際の保健所業務と合致せず導入に時間を要したことに加え,各自治体側が自助努力として進めていた業務支援策とのミスマッチが生じた.結果として,開発したシステムの活用は低調にとどまり,期待された情報集約の迅速化は実現しなかった.一方,地方自治体や医療機関では,国よりも限られた予算や権限において様々なシステムを開発し,感染対策に役立てていった.システム開発において,現場の業務知識を欠いたままトップダウン方針のみを強化すると,実ユーザとの乖離の拡大を通じたシステムの破綻という逆説的な状況が生じうる.デジタル庁の設置を初めとした今後の行政情報化に向け,貴重な教訓の共有とともに,行政におけるボトムアップ型の開発手法の検討が望まれる.
著者
町田 裕彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.55-66, 2022-06-20 (Released:2022-09-17)
参考文献数
37

本稿は,Plowman et al.(2007)に代表される継続的変革研究が想定していない,変革の意図をもったリーダーシップが連続的創発プロセスを起動するメカニズムの実証を目的とする.このリーダーシップをトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)として仮説を構築し検証した結果,このメカニズムは実証されたが,TFLのメカニズムへの関与によっては,起動を妨げうることも示唆された.
著者
壽 和夫 齋藤 寿広 町田 裕 佐藤 義彦 阿部 和幸 栗原 昭夫 緒方 達志 寺井 理治 西端 豊英 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.1, pp.11-21, 2002 (Released:2011-03-05)

1. ‘あきづき’は1985年に果樹試験場(現 果樹研究所)において‘162-29’に‘幸水’を交雑して育成した実生から選抜したやや晩生の赤ナシ品種である。1993年に一次選抜し,1994年からナシ第6回系統適応性検定試験に‘ナシ筑波47号’として供試した。その結果、1998年8月21日付けで‘あきづき’と命名され、なし農林19号として登録、公表された。また、2001年10月18日付けで種苗法に基づき第9401号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、短果枝、えき花芽ともに着生はやや少ない。開花期は‘幸水’とほぼ同時期で、‘筑水’とは交雑不和合であるが他の主要品種とは和合性である。‘豊水’と‘新高’の間に成熟し、病虫害に対しては通常の防除で対応できる。3. 果実は扁円形で平均果重が500g程度と‘豊水’より大きいが‘新高’よりは小さい。果肉は軟らかく、甘味は‘豊水’程度で酸味が僅かにあり、食味は良好である。芯腐れ、みつ症などの生理障害の発生は少ない。有てい果が多数混在する。
著者
赤星 保浩 花田 俊也 田村 英樹 町田 裕 福重 進也 高良 隆男
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.345-346, 2006

In order to simulate the debris impacts in geosynchronous orbit, we need the launcher that can launch the projectile under approximately 1[km/sec]. We converted a two-stage light gas gun into a powder gun. In generally, though sabot separation technique is used to launch the projectile of sphere, we can not apply its technique to a our powder gun. So we also conducted the development of new separation technique of projectile of sphere. In particular, we will show with the focus on the new separation technique.
著者
町田 裕彦
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180909a, (Released:2019-03-23)
参考文献数
35

Plowman, Baker, Beck, Kulkarni, Solansky, and Travis (2007) に代表される組織変革モデルでは、意図をもったリーダーシップが不在のもと、連続的な創発プロセスが起こりラディカルな組織変革が実現するとされている。しかしながら、このモデルでは、慣性の強い組織で意図をもったリーダーシップによりこれが起こりうることは検討されていない。本稿は、これが起こりうることを示した町田 (2017) の事例と本稿の事例を比較検討することにより、何がこの連続的な創発プロセスを起動しラディカルな組織変革を実現するのか解明し、この変革のプロセスを、既存の変革モデルと整合的に理解できる新たなモデルを提示することを目的とする。
著者
海老原 和雄 浴本 久雄 一町田 裕子 安部 史紀 井上 博 青柳 祥子 山下 巧 小結 明子 高橋 克俊 吉岡 修 松田 明
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.872-885, 1978-12-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
19

1962年, 梅沢, 等1) によつて発見されたブレオマイシン (以下BLM) は, 墓礎的研究をへで, 1965年はじめて市川, 等2) によつて臨床研究がおこなわれ, 陰茎癌に著るしい効果がみいだされた。その後, BLMは過去10年間の間に, 皮膚, 頭頚部, 口腔等の扁平上皮癌, ホジキン病, 睾丸腫瘍等に単独または併用によつて, 秀れた効果を発揮し, 固型癌の化学療法の治療体系の中に, 確固たる立殿確立した。BLMの臨床的研究は, 国の内外で広くおこなわれたが, その結果, 種々の扁平上皮癌, 睾丸腫瘍等の有効疾患, 投与方法, 併用療法について, 数多くの知見が得られたが, 薬剤の安全性の面からみると, BLMは多くの他の制癌剤と異なって, 骨髄毒性, 免疫抑制を示さない特徴をもっとともに, 肺に対する毒性が注目され, 高頻度ではないが, 時に致死的な副作用ともなる肺の線維症は, BLMの臨床使用上の1つの制限因子として, 臨床家の注目を集めた。梅沢, 等は3), BLMの研究の初期において, そのマウスの生体内分布性を抗菌活性および, 放射活性の両面から詳細に検討して, 抗腫瘍性をもつ物質の生体内分布の研究によつて, それが, 臨床応用されたばあいの有効性, 毒性の標的臓器を推定しうる方法論を確立した。それは, 「物質が高濃度に分布し, 分解を受けにくいか, 活性化を受けやすい腫瘍または臓器組織には有効性または毒性を発現する」と要約される。一方, 臨床研究の進行と平行しておこなわれたBLMの化学, 生化学, 発酵工学的研究の進歩によつて, 約300種に及ぶ末端アミンを異にする誘導体がつくられた。我々は4), これらの物質を梅沢の方法論にしたがつて, 従来のBLMと比較して,(1) BLMと同じ制癌スペクトルであるが, 抗腫瘍力が強い,(2) BLMより制癌スペクトルの拡大のあるもの,(3) 生体内分布に特徴をもつ,(4) 肺毒性が減少しているもの等を目標として選択をおこなつた。第1次スクリーニングにおいては, 抗菌, 抗腫瘍性 (HeLa S3細胞培養, マウスエールリッヒ腹水および固型癌) マウスを用いる臓器分布およびマウスを用いる肺線維化能について検討した。1次スクリーニングで選抜さ物質の中には, ラットAH66, AH66F, マウスL1210移植癌について検討したものもある。2次評価においては, 特定臓器の癌への有効性を検討することを主とし, 動物移植癌では代用し得ない癌においては, 実験方法および評価の困難性, 充分な動物数を得られない等の制約があるが, 動物自然発生腫瘍および, 化学発癌腫瘍を用いて検討した。本報告においては, 上記の方法によつて選抜した硫酸ペプレオマイシン (以下NK631と略) の諸性状について, 同時におこなったBLMの成績と対比して報告する。NK631の構造は, Fig.1に示すとおりである。
著者
間苧谷 徹 町田 裕
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-48, 1980
被引用文献数
6 15

本実験は, 夏季の土壌乾燥が, ウンシュウミカンの果実品質に及ぼす影響を検討し, 更に, はち植え幼木の実験で示した既報(14)のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> を, ほ場の樹で再検討した.<br>1. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と1果重(果径), 屈折計示度及び遊離酸含量との間には, 9月7日及び12月6日の採取果とも高い相関関係が認められた. 9月と12月とで, ψ<sub>max</sub> と屈折計示度の直線は -14bar 前後で交差し, ψ<sub>max</sub> が -14bar より低下した樹では, 12月の屈折計示度の方が9月より低下した. これに対して, 9月と12月の遊離酸含量の間には, 平行移動に似た関係が存在した.<br>2. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果実比重との間には, ψ<sub>max</sub> -11bar 前後を屈曲点に2種類の曲線関係が存在した. すなわち, ψ<sub>max</sub> が -11bar 前後までは,ψ<sub>max</sub> の低下に伴い果実比重は小さくなったが, ψ<sub>max</sub> がそれ以下になると, 逆に果実比重は増加していった.<br>3. 9月1日の ψ<sub>max</sub> と12月6日の果皮の着色程度との関係は余り密接でなく, 両者の間を直線関係とみなして相関係数を求めると, -0.7410であった.<br>4. 果実品質を余り低下させないですむ限界のかん水開始時の ψ<sub>max</sub> は -7bar 以上であり, ψ<sub>max</sub> をそれ以下にしない水管理が重要である. 出来れば, ψ<sub>max</sub> が-5.5bar 前後でかん水することが望ましい.<br>5. ψ<sub>max</sub> が -5.5bar に低下した後, 3mm/day のかん水で, ψ<sub>max</sub> を -5bar 前後に維持出来た. また, このかん水量で適湿区と近似した品質の果実が生産出来た.