著者
関 智英
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.16-29, 2015-07-25

伍澄宇は1910年代から20年代にかけて,中国同盟会員・国民党員として孫中山とアメリカや東南アジアで革命に従事した人物である。孫中山の死後は蒋介石に対する不満から政界を離れたが,日中戦争勃発後に維新政府・汪政権で立法院委員や内政部県政訓練所教官に就いた。その主張は孫中山の地方自治構想に沿ったもので,汪政権の憲政実施に向けた動きでも主導的な役割を担った。伍澄宇は維新政府・汪政権に積極的に参加したわけでないが,言論面では自らの役職を背景に主体的にその理念を表明し続けた。このように維新政府・汪政権は傀儡政府ながらも,一方で重慶国民政府と相容れなかった人々の中国の将来を巡る活動・発言の場としての側面も持っていた。